パリジェンヌはブランドより
“受け継いだもの”を愛する
あるときパリで、「あなたの大事なジュエリーを見せてください」というテーマで日本の女性ファッション誌の取材をしたことがあります。そのときに気づいたのは、多くのパリジェンヌは自分の母親や、祖母、叔母からもらったジュエリーを、肌身離さず上手に身につけているということでした。
祖母の遺品だというパールのネックレスを、ラコステの白のポロシャツの襟を立てて、その上から首にかけ、素敵なスタイリングをしていた若い女性もいました。
また、母親にもらったという婚約指輪のダイヤを、ディズニー風のブローチに作り変え、今の時代に合うようにリメイクしている人もいたのです。
日本でも『畏れ慄いて』が訳されている作家のアメリー・ノートン(注4)にインタヴューをしたとき、彼女はエキセントリックなシルクハットを被り、少しくたびれたツイードのジャケットを着て、颯爽と取材場所にやってきました。
「これはね、お祖父様が着ていたものなの。この背広は私の一番の宝物なのよ」
『おしゃれなマナーAtoZ パリで暮らして知ったミューズたちの素顔』(村上香住子、CEメディアハウス)
そう言っていたのです。
ティファニーやカルティエの華やかさとは違いますが、パリジェンヌたちには家族代々受け継いできたものを大事にして、エレガントに身につけるセンスが根本にあるようです。
まっさらの下ろしたてものではなく、どこかにオーセンティックなものを身につけることで深みを持たせるというのが、パリのエレガンスの流儀のような気がします。
(注4)ベルギーで生まれ、パリで活躍する作家。父が外交官で日本にベルギー大使として赴任したため、一時は日本に住んでいたこともある。『恐れ慄いて』など、日本で翻訳されている著書も多数。毎年9月になると書き下ろしの小説を発表し、それが必ずベストセラーになるという伝説の持ち主。







