FUTURE MEMORIES「古木」はアートとなり、その場をゆったりとした時間が流れる空間に変える。写真はイタリアのデザインイベントに出展された現地作家の古木作品 Photo by Federico Villa

「古木(こぼく)」は、解体後の古民家から得られる良質な再生木材に与えられる名称で、山翠舎の登録商標だ。主な用途は国内商業施設の内外装材料だが、最近は、欧州を中心とする海外で、アート作品素材としても高い評価を受けている。「置かれた瞬間に人の視線を引き付ける」古木の魅力を伝える上で、知的財産の活用に独自の考えを示す同社。国内外を問わず、人と古木が出合う「空間」を提供する新しいビジネスについて、山上社長に聞いた。(取材・文 タカハシトモコ)

>>山翠舎・山上浩明代表取締役社長に聞く(上)を読む

アートとして海外で評価される「KOBOKU」

――「古木(こぼく)」は、英文でも「KOBOKU」で商標登録されています。古木の世界市場での認知拡大をどのように行っていますか。

山上 古木が持つ「時間を経るほどに増していく価値」は、何世紀も前に造られた建物や街並みを現在でも大切に維持し利用する欧州のように、歴史やクラフトマンシップ、独自性を重んじる文化を有する国々で特に深い共感を得ています。

 例えば2026年4月、イタリア・ミラノでのデザインイベント「Milan Design Week 2026」にて、ロッサーナ・オルランディ(Rossana Orlandi)氏のキュレーションにより、現地を拠点に活動するデザイナーのロベルト・シローニ(Roberto Sironi)氏との協働で、古木を用いたアートピースの個展「FUTURE MEMORIES」を開催しました(「」参照)。

 古木の歴史性と文化的背景に触発されたシローニ氏によって、古木は“建材”から“アート”へと変換され、その作品は、ミラノで高く評価されました。

 彼の作品に貫かれている思想は、「未来は過去の記憶の再編集である」ということ。

 古木には、長い年月にわたる情報が内包されていて、古木に刻まれた時間や加工の痕跡(こんせき)を「装飾」ではなく「本質」としてそのまま生かし、日本の職人技や建築構造を尊重し、作品づくりに同様の技法を採用したといいます。

 日本から持ち込んだ“時間”が欧州でアートに形を変え、現地の人々の記憶と融合して新たな時間を刻み始める――国を超え、人として共通の感性を共有できたと思います。

 循環的な時間の概念をデザインに取り込む試みは、当社がこれまで取り組んできた「古木=時間資本」の考え方と重なります。思想として語るだけでなく、古木の核としてきた「時間の価値」を一つの形として提示したものであり、事業として実践してきた内容とも合致しています。

 時間の記憶が宿る古木と当社の古木加工技術とが、シローニ氏の構想と出合うことでアート作品として結実した本プロジェクトは、世界のアートの潮流に「KOBOKU」という共通言語をもって「時間の価値」を接続した事実であると自負しています。