また、安倍の死去後もいわゆるLGBT理解増進法などで右派への配慮は続いています(2*)。したがって、安倍の存在が右派の力を強め、その不在が力を弱めるものとなっているのかについては慎重な検討が必要でしょう。

自民党のほかにも
台頭する右派政党

 右派というとまず自民党をイメージしてしまいますが、それ以外の右派勢力もあり、自民党に飽き足らない人たちを一定程度ひきつける力を持っています。たとえば日本維新の会は、ナショナリズムや外交・安全保障に関しては自民党と立ち位置がほとんど同じですが、「伝統」に関してはほかの野党に近い傾向があります(3*)。特徴的なのは、立憲民主党・共産党に対する拒否感が強いことです。この野党間の埋めがたい分断が、自民党を利している側面もあります。

 2020年に結成された参政党は、その主張に歴史修正主義や排外主義が色濃く出ています。2022年の参院選で議席獲得を果たし、注目を集めました。ただ支持の背景としては、コロナ禍での反ワクチンの主張が大きかったとも目されています(4*)。

(2*)…「政府の腰が重い一因と見られるのが、自民党保守系議員による反発への警戒だ。増進法は、超党派議連の合意でいったん法案がまとまった後、一部自民党議員の主張に沿って修正が図られた経緯がある。『差別は許されない』との文言が『不当な差別はあってはならない』となったほか、『性自認』は『性同一性』に変わり、最終的には『ジェンダーアイデンティティー』に修正された。推進派の自民党閣僚経験者は、保守系議員の言動がより先鋭化しつつあると指摘する。『首相が一部の保守派を気にして動かない。それを見ている内閣府も動けない。結果として、政府の腹が据わらない』」「LGBT理解増進法、前進なき1年『自民保守系議員』に配慮?」朝日新聞、2024年6月25日
https://www.asahi.com/articles/ASS6T0FN7S6TUTFK009M.html

(3*)…朝日新聞と東京大学・谷口将紀研究室の共同調査でそうした結果が明確に示されています(朝日新聞、2021年10月21日・2022年6月24日)

(4*)…「参政党、176万票の熱気『コロナはシナリオ』政府批判 参院選」朝日新聞、2022年7月13日