「分からない状態」に耐える力を
受験生と親が一緒に楽しめる雑誌「中学への算数」
――横浜から南浦和まで通うのは小学生には酷ですね。
望月 当時は直通運転もなかったので、本当に大変だったと思います。都内を通過して埼玉まで通わせるのはかわいそうで、せめて東京に移るしかないかと思っていた時に、場所の提供を申し出てくれる支援者がいて、思い切って東京に出てきました。そこに1年いた後、現在の場所に移りました。
そんな経緯もあり、チラシでの告知もなく連絡先の公開もしないスタイルが始まりました。現在も正式の教室名はなく、各種の手続き上必要な仮の名称です。一応考えはしましたが、どのような名称を付けたとしても、たいてい短縮して表現する子どもたちに手ごろなものを思いつかなかったことと、看板を出す必要がなかったことで、考えるのをやめました。生徒たちが私の目の前で、大手塾〇〇は火曜日で「モチヅキ」は金曜日と口にするのを聞いて、最初は驚きましたが、今は慣れました。
――横浜以外に、遠方から通って来る生徒さんもできましたか。
望月 千葉市内や埼玉の大宮、神奈川の茅ケ崎や鎌倉からも通ってくるようになりました。
入江 「看板のない教室」の生まれた経緯がよく分かりました。
――ところで、最近の中学入試は、どの科目も問題文が昔よりも長文化している印象があります。特に、難関校ほど問題文を読み解くのに時間がかかります。数学でも読解力がこれまで以上に求められ、そこで差が付く場面が増えています。
望月 塾から渡されるあっさりとした解説を読んでも理解できないお母さんも多い。親として、分からないことが出てきたらまずいとなるのはやむを得ないのですが、そうした場合には、いずれ分かるから、その部分に付箋を付けて残しておくように言います。未解決問題として保留というか保存する、ということです。
入江 考える力を付けるためには、「ここから先の部分は、今は分からない」とそのまま置いておくことも大事ですよね。ほとんどの生徒は、解き方が分からないとすぐに解答を見て、それが理解できたら「分かったつもり」になって次に進んでいきます。
――入試は数学で差が付きますし、仕方ない面もあるのでしょうが⋯。
望月 生徒も保護者も、テストで点を取れないと偏差値が下がる、クラスが下がるので困ると焦り、とにかく解き方が分かったことにするというのは無理からぬことです。しかし、解説をそのまま受け入れて分かったことにしても、直近のテストでは何とかなっても、次々に新しいことを学ぶ過程で、3か月後、半年後には再現できなくなるのが普通です。ちょっとひねられた問題にはお手上げです。せっかく自分を高める困難に出会った時に、その困難の原因を学ばずに通過してしまうからです。
入江 月刊『中学への算数』(東京出版)の望月先生の連載で、数学者・森毅の名言が引用されていました。「ぼくは数学者として断言できるが、数学の力というものは、解き方が分かってしまったあとでは、ほとんどつくことがない。まだ解き方が分からず、解決へと向かう心の中でだけ、数学の力はつく」と。僕も全く同じ実感を持っています。







