EUの補助金凍結も打撃…親ロシア派のハンガリー前首相が大敗した深い理由【池上彰・増田ユリヤ】2026年4月12日に行われたハンガリーの総選挙で、マジャル・ペーテル氏率いる中道右派の政党ティサを応援する若者たち 撮影:増田ユリヤ

マジャル氏を支持する
若者たちの熱狂

池上 ハンガリーの総選挙でオルバン・ヴィクトル首相が率いる与党フィデス(ハンガリー市民連盟)が大敗し、16年ぶりの政権交代となりました。圧倒的多数の議席を獲得したのは、マジャル・ペーテル氏率いる中道右派の政党ティサ。増田さんは現地取材されましたが、様子はいかがでしたか。

増田 開票開始後に首都ブダペスト中心部で双方の支援者が集まる集会に行きましたが、オルバン側は劣勢を察知してか空席も目立ちました。一方、マジャル支持者が集まるドナウ川沿いの一帯は、若者たちで大混雑。ティサは「尊重と自由」のハンガリー語の略称ですが、ハンガリーを象徴する川の名前でもあり、集まった人々は口々に「ティサがあふれる!」と声を上げていました。

池上 投票率は80%近くに達したと報じられています。

増田 有権者の関心は高く、争点も欧州連合(EU)との距離感、与党の汚職など複数ありました。オルバン氏はこれまで小選挙区の比重を高め、選挙区の区割りを変更するなど、与党に有利になるように選挙制度を変えていたこともあり、前回選挙では与党が勝利。

 今回は「ウクライナ戦争に巻き込まれず子どもを守るオルバンを選ぶか、戦争に参加して子どもを殺されるティサを選ぶか」と、またしても敵をつくって攻撃する手法を取っていました。

 しかし2年前に聖職者のスキャンダルを追及して名を上げたマジャル氏が急速に支持を集めて選挙戦に臨みました。マジャル氏の元妻はオルバン政権で法務大臣を務めていたのですが、聖職者に対する罪を軽減した件についての証拠を暴露したのが当時の夫マジャル氏だったのです。その後、新興野党ティサに合流して党首となり、一気に政権を奪取しました。