「品質の高い国産豚ロースを使ったとんかつと、安い輸入豚を使ったとんかつで、コスト差が大きくなっているんじゃないかな?僕には松のやのとんかつは十分おいしいけどね」とお考えの読者も多いのではないでしょうか?

 実は松のやのとんかつの品質はかなり高いんです。そして大手チェーンも同じような品質の高い肉を使っています。

 大手のとんかつチェーンで品質が高くてコスパがいいお店といえば、すぐに思い浮かぶのが「とんかつ和幸」ではないでしょうか。人気メニューのロースかつ御飯が1530円、ひれかつ御飯が1700円です。「松のや」やライバルの「かつや」出現以前はこの和幸が庶民向けのとんかつの基準といってもいい水準でした。

 このとんかつ和幸の豚肉は主にアメリカやカナダから輸入しています。きちんと管理された環境で生育し、加工工場で和幸のとんかつにあう最適な豚肉を選定して、私たちに提供されています。

 そもそもの話ですが国産豚を提供する東京のとんかつの名店の価格水準は食べログで調べるとわかりますが基本的にはロースかつ定食で2500円前後と、さらに一段階高いというのが最近の相場です。

 それで話を松のやに戻します。これは松のやにかかわらず、大手外食チェーンに共通する経営戦略ですが、基本的に材料の品質を落として戦うことは選びません。とんかつであればいかに高い品質の豚肉をローコストで日本市場まで仕入れられるかに物凄い企業努力を注ぎます。

 ですから提供するかつの品質で、旧来型のとんかつチェーンと大きな差が開くことはありません。もちろん競合するチェーンは「うちの方が品質には自信がある」と主張するでしょうけれども、最近では安くても高品質の豚肉を輸入できるルートが存在するのも事実です。

 そのような企業努力視点でとらえると、実は直近の松のやの期間限定メニューで驚かされるのが「国産雪国育ちロースかつ定食」が890円で提供されているという事実です。アプリのクーポンを使うと実に790円。輸入豚のロースかつ定食690円とそれほど変わらない価格帯で国産豚のロースかつを提供しているのです。

 さて、それではそろそろ松のやのビジネスモデルの秘密に切り込んでいきましょう。

 松のやがインフレ下でも圧倒的なコスパでとんかつを提供できている秘密は2段階あります。

 そのうちの第一段階が「とんかつビジネスのファストフード化」です。実はこの第一段階では松のやのライバルでもある「かつや」が先行していました。この段階までを分析するとチェーン店としての「かつや」と「松のや」はよく似た方法で外食市場を開拓したといえます。

 しかしここ数年で松のやが台頭してきたのは第二段階の「かつやとのビジネスモデルの差異化」に理由がありそうです。この第二段階を分析すると、一見よく似ている「松のや」と「かつや」は、かなり違う戦略で、違った市場で戦っていることが理解できます。

 それを順を追って説明したいと思います。

「松のや」の戦略1
ファストフード化

 では最初に第一段階のファストフード化から解説します。「松のや」ではなく「和幸」や「まい泉」など従来型のとんかつ店に行ったときのことを思い浮かべてください。