「松のや」の戦略2
「かつや」との差別化
さて、ここからが第二段階です。先行する「かつや」が順調に店舗数を伸ばしていた時代、松屋フーズ傘下には実は「チキン亭」というかつの業態がありました。それほど店舗数はなかったのですが、私も近所に「チキン亭」があったので昔はよく利用していました。
その後、チキン亭とは別に「松乃家」というとんかつ業態が誕生し、その後、ブランドとオペレーションが「松のや」として統合された2010年代にチェーン店として拡大期に入ります。
2010年代初期には松のやは30店舗ほどでしたが、冒頭でお話ししたように2025年に松屋併設店を含めて松のやは500店舗を超えました。急拡大して先行する「かつや」の国内506店舗に追いついた形です。
さて、この松のやの店舗拡大期にとったのが第二段階の「かつやとの差異化戦略」でした。
「かつや」と「松のや」は消費者から見ればよく似たチェーンに見えます。特にメニューだけに注目しているとその差には気づかないでしょう。
しかし店舗展開をみると大きな違いに気づかされます。「かつや」は基本的には郊外ロードサイド型です。もちろん都心の駅前にもあるのですが、かつやの都心店は意外と閉店も多い特徴があります。ということはおそらく都心店は不採算になりやすいのでしょう。
かつやの主力顧客は昼間は郊外で車で移動するビジネスマン、夜や週末は家族での外食需要を取り込むのが基本的なビジネスモデルになっています。
これに対して、松のやは都市部の店舗展開が多くみられます。これは牛めしの顧客と同じターゲット層で、その意味では「かつやと競合しない市場」で「違う顧客」を獲得する差異化戦略で勢力を広げていきます。
ロードサイド型の「かつや」が都心型が苦手だとするとその理由は何でしょうか?理由はふたつあります。都心部では家賃が高いことと、人件費が高いことです。
その前提で利益をあげるためには差異化戦略として何をすればいいかというと、それは徹底的な自動化・DX化です。牛めしの松屋を利用されたことがある方はお気づきのように、牛丼チェーンの中で松屋はまっさきに券売機でのメニュー販売を始めました。
現在の店舗に入店するとわかる通り、松のやでは基本、接客はありません。来店客は券売機で券を買うと、自分で席に座り、セルフで水を汲んで必要であればテーブルもダスターで拭いて、スマホをいじりながら自分の番号が呼び出されるのを待ちます。調理が完成するとカウンターに出向いて自分で席に運び、食べ終わったら自分で返却口に食器とトレイを返します。
アプリでのデリバリー売り上がげ多いのもDX化の恩恵ですが、この点では「松のや」と「かつや」それぞれが同じように恩恵を受けていると思われます。
こうして観察してみるとわかりますが「かつや」のオペレーションからもう一段、省人化したビジネスモデル設計になっているのが「松のや」なのです。
そして「松のや」の差異化のもうひとつの特徴がブランドの併設です。松屋フーズのIRで調べると国内で500店舗を超えたとんかつ業態ですが、単独店舗は195店しかないとされています。つまり、300店以上が「松屋」やカツカレー業態の「マイカリー食堂」との併設なのです。
これはビジネスモデル的には固定費の共有になります。つまり一番コストがかかる人件費と店舗の経費を、ふたつないしは3つの業態で共有できるので、それぞれの業態から見ればコストは2分の1、または3分の1にできる計算です。
これが都心部で「松のや」がどんどん増殖していったビジネスモデル上の秘密です。かつやが「ファストフード経営」で躍進したのに対して、松のやは徹底した「効率経営」で先行するかつやとは違う戦略で台頭してきたといえるのです。








