会社が知りたいのは
資格よりスキル

 まず前提として押さえておきたいのは、資格とスキルは本質的に異なるものだということです。この点こそが、コスパのいい資格という発想の最大の盲点です。

 資格とは、ある知識を持っていることの証明です。スキルとは、その知識を実際に活用して成果を出せることの証明です。

 採用担当者が見ているのは後者です。簿記2級を持っているが経理の実務経験がゼロの人よりも、資格は何もないが10年間の経理実務経験がある人のほうが、評価は圧倒的に高いのです。知識があることと、それを使って仕事ができることのあいだには、大きな隔たりがあります。そして企業が採用で見ているのは、ほぼ例外なく後者です。

 もちろん、公認会計士や弁護士のような難関資格は話が別です。取得に数年にわたる学習と多大な努力を要するような資格には、それ自体が高度な専門性の証明になります。また、そこまでの難関資格を目指す場合には、長期間にわたって困難な課題に向き合い続けたという、取得のプロセス自体が、本人の資質や意欲を示す材料にもなります。勉強しながら現場でのキャリアも積んでいく、そのプロセスには確かに大きな意味があります。

 数カ月の学習で取れるような資格は、多くの人がすでに持っているか、いつでも取れるため、差別化の要因にはなりません。採用担当者の目には、「ああ、そういう名前の資格もあるよね」という程度にしか映らない。市場価値を上げる手段として期待するものではないのです。

「コスパのいい資格」という
発想の大問題

 では実際に、40代以降のキャリアで評価される人年の共通点は何か。それは今の職場で、とことん専門性を極め、そこで実績を積んできたことです。

 具体的には、この商材ならば誰よりも詳しいという知識と経験の多さや、労務管理のエキスパートとして社内外から頼られるといったポジションを意識的に作り上げることを指します。広く浅くではなく、狭く深く。それが中高年の市場価値の源泉です。今の仕事を究めることに集中し、その分野での第一人者に近い存在になることこそが、最も確かなキャリア形成の道です。

 厚生労働省の能力開発基本調査によれば、50歳以上の正社員に対して企業が求める要件の第1位はマネジメント能力・リーダーシップ、第2位は協調性です。

 これらはいずれも、資格という形では証明できないヒューマンスキルです。テクニカルスキルを証明する資格が上位に来ることはありません。企業が中高年の人材に本当に求めているものと、資格取得によって満たそうとしているものとのあいだには、明確なギャップがあります。

 さらに言えば、コスパのいい資格を探す発想そのものに問題があります。