長く働いて多くの収入を得たい労働者の
「稼ぎたい自由」を損ねている?
この点を克服するために設立された高度プロフェッショナル制度(編集部注/高度な専門知識を持ち、年収1075万円以上など特定の要件を満たす職務は、労働時間規制の適用除外とする制度)も、その適用条件が厳しいことからほとんど利用されていません。
この背後には、個人の職務の範囲が明確でない日本では、仕事能力の高い個人に仕事が集中する傾向があり、それを防ぐために(効果は小さくても)残業割増賃金を完全には撤廃できないという見方もあります。
高市政権になって、この労働時間規制の壁が、より長く働いて多くの収入を得たい労働者の「稼ぎたい自由」を損ねているという主張が高まっています。
これに対しては、現行の労働時間の上限自体はすでに高く、その見直しよりも、欧米諸国のように、時間規制の画一的な適用から除外される労働者を増やすことについての検討が必要です。
労働時間規制は、本来、労働者の健康を確保することが主な目的です。それがデジタル技術の活用等、別の手段で確保されるとともに、労働者の自由な意思によることが明確に担保されれば、労働時間規制の弾力化は可能といえます。
労使対立の前に
「労働者同士」の利害衝突
この日本的雇用慣行は、「非効率な面もあるが労働者にとって公平な仕組み」という評価がありますが、それは正規社員という特定の範囲内の雇用者の視点です。
むしろ企業内訓練で熟練労働者を形成する仕組みは効率的ですが、大企業と中小企業、正規と非正規、男性と女性、中高年齢層と若年層等、多様な労働者間での利害の対立が内在しています。それにもかかわらず、政府は伝統的な「労使対立」の枠組みにこだわっており、多様な労働者間の利害の「労労対立」への対応に及び腰です(八代尚宏『日本的雇用慣行の経済学』、日本経済新聞社、1997年)。
伝統的な労働市場では、労働者と使用者との間の「労使対立」の前提の下で、交渉力に劣る労働者の保護を図ることが労働法の主要な目的とされていました。しかし、欧米諸国の職種別労働市場と比べて、日本の企業別に分断された大企業の内部労働市場では、長期雇用保障を前提とした労使間の利益配分が共通の目標となります。







