イランはイラク戦争で学んだ「負けない戦術」奏功、中東での存在感増すも“復興”の行方は見えずイラン、ホルモズガン州で7月16日の米軍の空爆で損傷した橋 Photo:Contributor/gettyimages

イランが米国に勝ったとの評価も
停戦覚書では主張が多く盛り込まれる

 米国とイランの終戦に向けた協議は、ホルムズ海峡の管理やイランの非核化などの問題で溝が埋まらないまま、双方が攻撃を再開し、戦闘終結には再び暗雲が立ち込める。

 6月17日に米国とイラン、および仲介国のパキスタンが署名した終結に向けた覚書の存続はすでに危ぶまれている。

 しかし、この覚書には、イラン側の要求もかなり盛り込まれた。たとえば米国は、「レバノンを含む全ての戦線における軍事行動の終了」を約束し、ホルムズ海峡の逆封鎖の解除や凍結資産の解除を含む対イラン制裁の解除にも合意した。

 米国がイランの核施設を爆撃した2025年6月の「12日間戦争」や今回のイラン攻撃に際し、トランプ大統領がイランに無条件降伏を求め、レジーム・チェンジすら視野に短期での決着を狙っていたことからすれば、覚書の文言からは米国がイランに相当歩み寄ったことがうかがえる。

 実際の戦闘でも、世界最強の米国と軍事大国イスラエルが同時にイランに攻め込んだにもかかわらず、ドローンやホルムズ海峡封鎖などの「非対称戦術」を駆使するイランがこれに屈しなかったことは、それ自体ひとつの勝利と呼ぶこともできる。

 イラン国内に目を転じると、イランのイスラム共和国体制(以下、イスラム体制)は、「侵略者の撃退」への国民の支持も手に入れた。

 現状ではイランは再度、米国の激しい攻撃にさらされており、戦闘が収束するかどうかは見通せない。しかし、イスラム体制は倒れておらず、この戦争を経て、イランの中東での存在感は高まったとすらいえる。

 だが、米国には「負けていない」イランにも、「戦後」の課題は少なくない。