「言語化にモヤモヤする」
「即答よりじっくり考えるほうが大事」
「口下手のままでもいいじゃない」…

など、まったく新しいコミュ力を説いた書籍『言語化だけじゃ伝わんない』が発売された。著者でイラストレーターのヤギワタル氏は、これまで200冊以上の書籍でイラストや装画を担当してきて、今回が初の単著となる。本書では、昨今の「言語化ブーム」に対して警鐘を鳴らし、「言語化“以外”に目を向けること」をイラストレーターならではの視点で面白く解説している。本記事では、その中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

頭の悪い人はすぐに「わかる」と即答する。じゃあ、頭のいい人は?

頭の悪い人は即答する?

「わかる!」

 会話の中で、私たちはよくこの言葉を使います。

 共感を示したい。相手に寄り添いたい。会話をスムーズに進めたい。
 だから、反射的に「わかる」と言ってしまう

 ですが、『言語化だけじゃ伝わんない』という本では、「その“わかる”は、本当に相手を理解しているのか?」という鋭い問いが投げかけられています。

同じ言葉でも、意味はズレている

 本書では、映画の小話が紹介されています。

2人の婦人がレストランに食事に行った。
ひとりが「このレストランの料理はひどいわね」と不満を言う。
するともうひとりの婦人は「わかる! 本当にそうね」とあいづちを打ち、こう言った。
「量が少なすぎるのよね」
これは、ウディ・アレン監督の映画『アニー・ホール』の冒頭。
スタンドアップコメディアンの主人公が、カメラに向かってした小話です。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 2人とも「ひどい」と言っている。だから、一瞬わかり合えた気がする。

 ですが実際には、「まずい」と思っていた人と、「量が少ない」と思っていた人だった。
 つまり、同じ言葉を使っていても、中身はまったく違ったのです。

「わかる」は危険な言葉

 本書では、さらにこう語られています。

食事がまずくて「ひどい」と言う婦人と、食事の量に怒って『ひどい』と言う婦人。
同じ「ひどい」でも、感じている内容は真逆です。
でも、2人は、一度は「わかる!」と一瞬わかりあえていました。
つまり、「わかる」という言葉が出てきたとしても、お互いがわかりあえているとは限らないのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 人は、「同じラベル」を見つけると、すぐに理解した気になります

「つらい」「やばい」「ひどい」。こういう言葉は便利です。

 ですが、その便利さゆえに、「相手が本当は何を感じているのか」を見なくなる危険があります
 つまり、「わかる」と即答する人ほど、実は相手を観察していない可能性があるのです。

頭のいい人は、「言葉」を一度疑う

 本書では、最後にこう語られています。

2人は、食事のひどさでわかり合ったはずでした。
でも実際は、「まずい」と思っていた人と「少ない」と思っていた人がいました。
実はこのすれちがいは、言葉だけでできている小話だから成立するのです。
2人の実際の状況を頭の中でイメージしてみましょう。
「ひどい」と言っている婦人のお皿と「少ない」と言っている婦人のお皿には、ちがいがあるのではないでしょうか。
ひどいと言っている婦人は、なかなか食べ終えられないはずです。
一方で、少ないと言った婦人は、あっという間に食べ終えているでしょう。

もし2人がお互いをよく見ていたら、すれちがっていないのです
言葉を聞いた瞬間、自分の中で相手のことをわかってしまった。
それ以上、相手を観察することをやめてしまった。

観察を続けるには、相手が使う『言葉(ラベル)』を、いったん横においておく必要があります
「大丈夫です」「ひどい」というラベルに飛びつけば、状況の判断を間違ってしまう。
そうならないために、まず先に観察する。
もしくは、その言葉がひとまとめにしている実際をイメージしていく。
そうすることで、すれちがいを大幅に減らすことができるはずです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 これは、コミュニケーションの本質です。
 頭の悪い人ほど、「わかった気になる」
 頭のいい人ほど、「本当に同じ意味で使っているのか?」を疑う

 だから、すぐに結論を出さない。
 まず観察する。相手の状況を想像する。言葉の裏側を考える
 そのひと手間があるから、すれ違いが減るのです。

「わかる」を急がない人ほど、相手を理解できる

 最近は、「共感力」が重視される時代です。

 ですが、『言語化だけじゃ伝わんない』は、「すぐに共感しようとすること」が、逆に相手を見失う原因になることもあると教えてくれます。

 本当に相手を理解する人は、「わかる」と即答しません。

 まず、相手を観察する
 そして、「この人は、何を“ひどい”と思っているんだろう?」と考える

 それこそが、本当のコミュニケーションなのです。

ヤギワタル
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。