そこで採用したのが、世間一般で「ハイスペック」といわれるような人材です。大企業でマネジャーを務めていたり、コンサルティングファームで働いていたり、海外のビジネススクールを卒業していたりといった、それまでのアスクルにはいなかった、ピカピカの経歴を持った人たちを採用しました。

 こうした人たちがマネジャーや経営幹部として活躍するようになれば、さらに会社が成長すると考えたのです。

 一方、そうした人材も、急成長するアスクルに興味を持って、応募してきてくれるようになりました。

 こうして、2000年前後のアスクルにはハイスペックといわれる人材が数多く集まり、働くようになりました。

仕事ができないばかりか
高い給料を要求された

 ところが、「ハイスペック」だと思って採用した社員と一緒に働いていると、想定していなかったことが起きるようになりました。

 ひとつは、期待していた仕事ができないハイスペック人材が少なからずいたことです。

 たとえば、人事の仕組みを一から整備するために大企業の人事部長を採用しました(実際は別の業務ですが、便宜上、人事と書きます)。しかし、その人事部長は人事の仕組みをつくることができませんでした。なぜなら、前職ではすでに仕組み化されている制度を運用していただけであり、仕組み化するノウハウは持っていなかったからです。

 これは、ハイスペックに惑わされて、「この人ならできる」と思い込んで採用した私たちのミスなのですが、そういう人が会社の水準よりも高い給料を要求することもありました。仕事をしていないのに、他の同等のポジションの人よりも高い給料を渡すわけにはいきません。その対応に苦慮することになりました。

 また、長く他の職場で働いていたがゆえに、前職の価値観でしか物事を判断できない人も少なからずいました。

 その典型的な例が、「利益へのこだわりが強すぎる」人です。会社組織を存続させるために、利益はもちろん重要です。しかし、利益にこだわりすぎると、「お客様のために進化する」という企業理念と齟齬が生じ、企業理念と異なる行動を取ることがあります。