ひとつの例が、「コピー用紙」事件です。「コピー用紙を扱うのをやめよう」という提案が出たことがあったのです。コピー用紙は差別化がしにくく、安売り競争になってしまって、利益が確保しづらい商品です。利益を増やすことを考えたら、ここにメスを入れたほうがいいのではないか、という意見でした。

 しかし、「お客様のために進化する」という企業理念に立ち戻れば、コピー用紙の取り扱いをやめることが、お客様のためになるとは思えません。オフィスで最も多く使われる商品が、コピー用紙だからです。

 もちろん、コピー用紙の取り扱いをやめることはしませんでしたが、会社の文化を知らない社員が増えてくると、このようなやり取りが増えるということを実感しました。

 なお、その後のデータ分析で、コピー用紙を購入したお客様は、それがきっかけになって他の商品も購入されていることが明らかになりました。論理的にも、コピー用紙を安く売り続けることは正しかったわけです。

 また、一部のハイスペックな社員は、上場するとすぐに辞めていってしまいました。本当の理由はわかりませんが、ストックオプションを目的に、上場直前の企業に転職する人だったのかもしれません。

 高い授業料を払ったことで、良い教訓を得ることができました。

経歴やスペックの高さよりも
理念の一致を重視すべき

 以来、私は、採用にあたっては、次のことを意識するようになったのです。それは、「開拓者」を大切にする、ということです。

 新たな土地を切り拓こうと、本当に良い場所なのかどうかわからないようなところを目指し、安全かどうかわからない船で一緒に航海をしてくれる。船底に穴があいて水が入ってきたら、「水が漏れていますよ」と指摘するだけでなく、率先して水を汲み出し、船を守ろうとする。目指す土地に上陸したら、その場所をよくするために、一緒に開拓に励んでくれる。そんな人たちのことです。

 会社でいえば、創業時からの会社の理念を理解し、それに向かって一緒に行動してくれる人といえるでしょう。