そういう人は創業メンバーに多くいますが、途中で入社してきた人でも、最初の意志を共有していれば「開拓者」です。私は、経営幹部やマネジャー候補を採用する時は、「開拓者であるかどうか」を重視するようにしました。

 確かに実務能力も必要ですし、まったく考慮しなかったわけではないのですが、それは入社後でも鍛えられることです。それよりも大切なのは、開拓者の気持ちを持っていることだと考えたのです。

 どんなに優秀だとしても、会社の理念を理解していない人が管理職になってしまうと、会社のよさが消えていってしまいます。人事考課制度も、長く働いてくれる「開拓者」が報われるよう、成果によって大きく上げ下げすることのない制度にしました。

 当時、急成長していたITベンチャーは、成果を出せばそれだけ給料に跳ね返る制度を採用していましたから、そこと比べると、ハイスペック人材にとっては魅力が劣る制度だったと思います。

キラキラした人材を
採用すればいいとは限らない

 このような採用戦略をとったことで、アスクルには「開拓者」が集まるようになりました。その結果、さらなる成長を遂げたのは周知の通りです。

 これは意図したわけではないのですが、後から振り返って興味深く感じたのは、中途入社で役員になったメンバーの多くが、かつての勤務先が倒産などの憂き目にあって苦労した人だったことです。

 たとえばCFOになったのは、以前の職場で、敗戦処理のために銀行と厳しい交渉をした人でした。厳しい経験をしてきたからこそ、今度こそ会社をちゃんと守りたいと考えたのでしょうし、CFOとしての仕事の勘所もつかんでいたのだと思います。

 そうした苦しい目にあった人たちを、「運気が下がるから」と採用を避ける会社もあるようですが、アスクルは採用していましたし、入社後も大活躍してくれました。

 表面的にキラキラしている人たちを採用すればいいというわけではないことを、ここでも思わされました。