あなたは、「仕事ができるようになりたい」と思ったことがありますか?
でも、「仕事ができる」とはいったい何を指すのでしょう。プレゼンがうまいこと? 英語がペラペラなこと? AIを駆使すること? ……残念ながら、これらはすべて「仕事ができる人」の条件ではありません。では、何をすれば「仕事ができる人」になれるのでしょうか? 3万人を分析して「できる人側」になる絶対ルールをまとめた書籍『仕事ができる人の頭のなか』著者の木暮太一氏に、今回は、できる人の文章の書き方について伺いました。
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「読みにくいな……」と思われていないか?
突然ですが、あなたの文章は、相手を「働かせて」いませんか? 相手から「何が言いたいかわからない」「読みづらい」「もっとコンパクトにして要点をまとめて」など言われた経験はないでしょうか?
ぼく自身、新人時代に一生懸命書いた報告メールに対して、上司から「何が言いたいのかわからない」と返されたことがあります。丁寧に書いたのに、と落ち込みました。しかし振り返ると、当時のぼくは「自分が伝えたいこと」を書いていただけで、「相手が知りたいこと」を書いていなかったんです。だから反応も来ないし、そもそもちゃんと読んでもらえません。
拙著『仕事ができる人の頭のなか』では、「仕事とは、相手の負荷を減らすことである」と定義しています。その視点で考えると、読んでもらえる文章とそうでない文章の違いがかなりわかりやすく見えてきます。
これまで3万人以上のビジネスパーソンに接してきましたが、「仕事ができる」と評価される人の文章には明確な共通点があります。文章がうまいことではありません。読んだ相手が「考えなくて済む」ように書いている、ということです。
プライベートの手紙に「相手」がいるのと同じように、仕事の文章にも必ず「相手」がいます。メールもチャットも議事録も、すべて「誰かに読まれて、その人が判断・行動する」ために存在しています。だから仕事の文章の良し悪しは、「丁寧に書いたか」ではなく「読んだ相手がどれだけ楽に動けるか」で決まるんです。
「単語メモ」が仕事を止めている
文章がわかりづらい、読んでもらえない人の特徴で多いのが、単語の羅列でメモを取る癖があるというものです。
たとえば会議のメモに「売上 改善 田中さん確認 来月 施策検討」と書く。書いた直後は自分でわかるかもしれません。でも1週間後に振り返ると、自分自身でもよくわかりません。「売上が何だっけ?」「改善って、何をどうすればいいんだろう?」と疑問だらけです。
そして、自分でもよくわかっていないのに、その状態で議事録や報告書を書いてしまいます。これでは書類を受け取った人もまったく理解できませんね。
仕事ができる人は、単語ではなく「文章で」書きます。
「売上が前月比15%減。原因はキャンペーン終了による流入減。田中さんに顧客データの内訳を来週水曜までに確認依頼。来月の定例までに代替施策を3案作成する」
たったこれだけの違いで、誰が読んでも状況がわかり、次に何をすべきかも明確になります。
「文章で書くと時間がかかる」と思うかもしれません。でも実際は逆です。単語メモを書いた場合、あとから「これ何だっけ?」と自分で思い出す手間、相手に聞かれて説明する手間が必ず発生します。最初から文章で書くほうが、トータルでは圧倒的に速いんです。
漠然とした言葉は「分解」する
もうひとつやりがちなのが、漠然とした言葉をそのまま使ってしまうことです。「今後の方向性を検討する」「連携を強化する」「戦略的に推進する」など、ビジネスの現場ではよく聞くけど「よくよく考えると何が言いたいか全くわからない」という言い回しがあります。
「方向性を検討する」と言いますが、具体的に何をするのでしょう? 「連携を強化する」とは、誰と誰が、何を、どうやって、でしょうか。書き手はそれっぽくまとめたつもりで書いているかもしれませんが、相手は何も受け取れません。なんとなくわかった気になり放置するか、「どういう意味だろう……」と考え始めます。ここで相手に負荷をかけてしまっているわけです。
仕事ができる人は、漠然とした言葉を分解します。「連携を強化する」ではなく、「営業部から週次で案件リストを共有してもらい、マーケ部が翌週のメルマガのターゲット選定に使う」と書きます。「ざっくりどういう意味か」ではなく「具体的にこれをする」と書きます。
「誰が・何をする・なんのために」を必ず入れる
では、どう分解すればいいのか。ぼくが多くの「できる人」を観察して見つけたのは、文章のなかに「誰が」「何をする」「なんのために」の3点セットが必ず入っている、ということです。たとえば「プロモーションを実施することを決めた」と議事録に書いてあったとしましょう。これでもやり過ごせてしまいそうですが、よくよく考えると何を指しているのかわかりません。
仕事ができる人はこう書きます。
「新規アポを月10件増やすために(なんのために)、マーケチームが(誰が)、SNS広告とチラシ配布を来月15日までに開始する(何をする)ことを決めた」
3点セットがあれば、何をもって「できた」と判断するかも明確です。逆に、3点セットが欠けた文章は、読む側がいちいち考えなければいけません。
チャットの「1行目」で評価は決まる
じつは文章力が最も明白に出てしまうのが、日常のチャットです。ダメなパターンはこうです。
「お疲れさまです。先日の件なのですが、いろいろ考えたのですが、やはり少し厳しいかなと思いまして、もし可能であればご相談させていただきたいのですが……」
丁寧ではあります。でも読んだ上司の頭には「何の件?」「何が厳しいの?」「何を相談したいの?」と疑問が積み上がります。結局「何の件?」と聞き返すしかありません。
仕事ができる人は、1行目に結論を置きます。
「A社の納期を1週間延長したいのですが、ご判断いただけますか?」
これだけで用件が瞬時にわかります。背景が必要なら後に続ければいい。大事なのは、まず1行目で「何の話?」という負荷をゼロにすることです。上司は1日に何十通ものメッセージを処理しています。1行目で用件がわかる文章を書く人は、それだけで「楽だ=仕事ができる」と評価されていきます。
「自分がやったこと」ではなく「相手が判断すること」を書く
できる人の文章は「相手が何を判断するか」から逆算して書かれています。仕事ができない人の報告はこうなります。
「まずA社に電話しました。担当者不在で折り返しを依頼しました。その後B社に訪問し、見積もりの修正を求められました。10%値引きしてほしいと言われてしまいました。どうしましょう?」
これでは日記です。一方で、仕事ができる人はこう書きます。
「B社から見積もり10%減額の要請がありました。利益率を考えると5%が限界です。5%減額で再提出してよいか、ご判断をお願いします。なお、A社は担当者不在のため明日再連絡します」
こうなると意思決定の材料になります。
上司が必要としているのは行動記録ではなく、「自分が何を決めればいいか」がわかる情報です。相手の判断から逆算すると、文章は自然と短くなります。必要な情報だけが残り、それ以外は削れるからです。「短いのに伝わる」の正体はここにあります。
文章力とは「相手の負荷を減らす力」
仕事の文章は「うまく書く」必要はありません。名文も語彙も要りません。必要なのはたったひとつ、「読む人が考えなくて済むように書く」という意識だけです。
単語ではなく文章で書く。漠然とした言葉は分解する。「誰が・何をする・なんのために」を入れる。1行目に結論を置く。相手の判断から逆算する。
こう見ると、どれも今日からできることばかりです。
よく「文章力は才能だ」と言われますが、仕事上の文章に限れば、それは誤解です。大きな誤解です。仕事の文章力とは「相手の立場に立てるかどうか」です。読む人はどんな状況で読むのか。何を知りたいのか。何を決めたいのか。それを想像して、相手が楽になるように書く。それだけのことです。
これを意識するだけで、返信が速くなり、やり直しが減り、「あの人の文章はわかりやすい」と言われるようになります。
(本記事は、『仕事ができる人の頭のなか』に関連した書き下ろし記事です)







