ガソリン代補助金によって
物価上昇率が押し下げられた
毎月勤労統計では、実質賃金を計算する際、一般に用いられる「生鮮食品を除く総合」(コアCPI)ではなく、「持家の帰属家賃を除く総合」を用いる。
26年3月のこの指数は、前年同月比1.6%上昇にとどまった。一方、現金給与総額は2.7%増だった。したがって実質賃金は1.0%増となったのだ。
26年3月の全国消費者物価指数を見ると、総合指数は前年同月比1.5%上昇、生鮮食品を除く総合は1.8%上昇だった。コアCPIは2月の1.6%上昇からはやや上昇率が拡大したものの、25年中に見られた3%前後の物価上昇率に比べれば、かなり低い水準にとどまっている。
このように、実質賃金の改善は賃上げだけでなく、政府のガソリン代支援による物価上昇率の低下によって支えられているのだ。
補助金額は急速に拡大、月5000億円ペースに!?
長期的な財政負担に固定化する危険
ホルムズ海峡封鎖に伴う原油高への対策として、政府は3月19日からガソリンの店頭小売価格を1リットル=170円程度に抑えるとして、燃料油への補助を再開した。
この政策によって、家計や事業者の負担は短期的には軽くなる。ガソリン価格が急騰すれば、自動車を使う家計、物流業者、農業者、中小企業などに直ちに影響が及ぶから、急激な価格上昇を和らげることに一定の意味があるとは言える。
しかしこの政策は、ガソリン価格急騰の原因であるホルムズ海峡閉鎖による原油価格の上昇を市場価格として表面化させず、財政支出として裏側に回しているだけなのだ。
しかも、原油価格が高くなればなるほど、政府の補助額も膨らむ。
当初、政府はガソリン1リットル当たりの補助を30円程度と想定し、月3000億円ほどの支出を見込んでいた。しかし、想定を上回るペースで原油価格が高騰したため、補助額は膨らんでいる。現状では月5000億円ペースに達しているとみられる。
26年度予算には、中東情勢の急激な悪化や原油価格高騰への大規模な対策は十分には織り込まれていない。アメリカとイランの和平交渉合意のめどは見えない状況だ。ガソリン補助が長引けば、財源となっている基金(4月末時点で残高は9800億円)では足りなくなる可能性がある。そのため、早くも補正予算の編成論が浮上している。
この構図は極めて深刻だ。消費者物価指数を抑えるためにガソリン価格を補助すれば、実質賃金は改善して見える。しかし、その裏側では政府の財政負担が急速に拡大する。
しかも、補助金は一度始めるとやめにくい。価格が上がっている最中に補助を打ち切れば、店頭価格は一気に上昇し、家計の不満が強まる。したがって政治的に延長を求める圧力が強まる。
短期的な負担軽減策が、長期的な財政負担へと固定化する危険がある。







