サラリーマンでありながらサンダンス映画祭で日本人初のグランプリを受賞した映画監督/脚本家の長久允氏。その思考法を存分に伝える『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』から、抜粋・再構成し、作品づくりの根幹に迫る。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

脚本の教室Photo: Adobe Stock

感情には価値がある

「あなたの強みはなんですか?」と聞かれたとき、多くのビジネスパーソンは「論理的思考力」や「実行力」を挙げるでしょう。

 しかし、世界の舞台で異彩を放つ表現者たちが武器にしているのは、まったく別のものです。
 それが感情です。

「感情的になるな」と言われ続けてきた日本のビジネス環境では、感情は「制御すべきもの」として扱われてきました。

 しかし、それは大きな誤解かもしれません。

 ハリウッドの現場でも、聞かれるのは「What’s your VOICE?――あなたのボイスは何ですか?」ということです。

 大きな賞を獲る作品も、多くの人の記憶に残る企画も、出発点はとても個人的な感情であることが多いのです。

日々の気づきを流さずに
創作のタネにするための行動リスト

 腹が立った。悲しかった。なぜか忘れられなかった。うまく言葉にできないけれど、胸の奥に引っかかっている――。

 そうした感情は、放っておけば日常に流されていきます。

 けれどそれを流さずに立ち止まるために、日常の気になること、魅力的な瞬間、違和感のあることをメモするのは良い方法です。

 私はスマホのメモ機能に10年近くメモをし続けています。

 車窓から見た気になる看板の言葉。スーパーマーケットのオオゼキで買い物中に遭遇した親子の会話。くだらないダジャレ。妻との会話で腑に落ちなかったこと。

 そういった特に企画にも何にもなっていないけど日記にも満たない瞬間の記録をつけています。

 そこにはダイナミックではないけれど大事な感情が残されているときもあるし、くだらないと思っていたダジャレがなぜか大きくてシンプルな企画に発展することもあります。

 それを起点にして、気になることは調べたり、取材をしたり、そこから妄想を膨らませていったりします。

 これらをぐるぐると続けていると次第に、「私はこの物語を書くべきだ!」というバクッとしたアイデアと使命感が空から降ってきます。

 突然降るときもあれば、2か月かけてじわじわと予感が確信に変わってくるときもあります。

 まぁ言ってしまえばすべて思い込みなのですが、私はこの思い込みに向かっていつもアクセル全踏みすることにしています。

 自分の体で味わったこと。自分の外にある情報。経験でも取材でも現実でもない頭の中にある妄想。
 これらの組み合わせで、あなたにしか作れない強いコンテンツができるのです。