「お金くれたら、仕事を教えるよ」先輩のイビリ→朝ドラヒロインが気づいた“悲しい格差”〈風、薫る第42回〉

りんにお金を要求するフユ

「私はあなたたち見習いさんたちと違うの、いちいち患者の子どもを預かっていたら仕事にならない」

 多江(生田絵梨花)や喜代(菊池亜希子)が患者の赤ん坊を預かり、ツヤ(東野絢香)にも手伝いを頼んだところ、けんもほろろに拒否された。

 この台詞が、看病婦たちの一見雑な仕事ぶりの理由を物語っている。

 見習い看護婦の積極起用は強引に進められていく。りんや直美はまったく経験がないのに、手術室に入るように言われるが、現場では全然役に立たない。

 医者としては看護婦がいるだけで、患者の評判があがるというだけのことなのだ。これじゃあ長年働いてきた看病婦はやりきれない。

 りんたちがフユたちに仕事を教えてくれと頼んだときの返事はひどく冷たいものだった。

「お金くれたらね。教えるんだから、お金もらわなきゃ割に合わない」

「お金だなんて卑しい」と世間知らずのお嬢様たちは思う。

 でも、直美だけは「卑しいんじゃなくて、本当にお金がなくて、切羽詰まってるとは考えないの?」と反論する。

 もともと、看護婦は卑しい職業とされていて、その偏見を覆すためにりんたちがいる。偏見の目に晒されてきた看病婦を10年も前からやっているということは「お金に困ってる人たちなんじゃない?」と直美。

 行き場のない女の人、身寄りのない人や、遊郭にいたやり手婆もいると、多江も父から聞いたことがあったと思い出す。

 看病婦の給金は月3円。アメリカでは、トレインドナースは月30円。

 大きな差である。それでもこの時代の日本の女性には3円だっていいほうなのだ。りんが瑞穂屋でいただいていた給金も3円。そのお金がどれだけありがたかったか、りんなら実感できるはずだ。

 ちなみに、前作『ばけばけ』のトキ(髙石あかり)の女中給金は20円。ドラマ放送時、20円がどれくらいなのかピンとこなかったが、『風、薫る』を経たいま、どれだけ破格か実感できる。