「言語化にモヤモヤする」
「即答よりじっくり考えるほうが大事」
「口下手のままでもいいじゃない」…

など、まったく新しいコミュ力を説いた書籍『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』が発売された。著者でイラストレーターのヤギワタル氏は、これまで200冊以上の書籍でイラストや装画を担当してきて、今回が初の単著となる。本書では、昨今の「言語化ブーム」に対して警鐘を鳴らし、「言語化“以外”に目を向けること」をイラストレーターならではの視点で面白く解説している。本記事では、その中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「トーストを焼くだけは料理じゃない」と批判する人が勘違いしていることとは?

「パンを焼くだけ」は料理じゃない?

「それ、料理って言わないから」

 誰かがそう言っているのを聞いたことはないでしょうか。

 たとえば、トーストを焼いただけ。
 レトルトを温めただけ。
 盛り付けただけ。

 すると、「本当の料理じゃない」と言い出す人がいる。

 ですが、『言語化だけじゃ伝わんない』という本では、こうした議論そのものが、“言葉の落とし穴”から生まれていると語られています。

「料理」の境界線はどこにあるのか

 本書では、まずこんな話が出てきます。

私たちの日常用語は、短く端的にまとめられたものです。
たとえば「料理」という言葉。
私は料理が苦手です。
ですが、「料理ができない」というわけではありません。
食パンを袋から出して、トースターで焼くことができます。
「それ、料理って言わないから」と思うかもしれません。
では、何をしたら料理になるのでしょうか。
食パンの上に生卵をのせて焼いたら、料理と言えるでしょうか。
――『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』より

 たしかに、「料理」という言葉はみんな使っている。
 ですが、「どこから料理なのか」を厳密に説明しようとすると、急に曖昧になります。

 つまり、私たちは普段、なんとなく言葉を使っているのです

言葉は「似たもの」をまとめている

 本書では、さらにこう続きます。

「料理」という言葉の中には、さまざまなものが含まれています。
カレーをつくるのも料理。
味噌汁をつくるのも料理。
レストランの厨房でやるのも、一般家庭の台所でやるのも、同じく料理です。
言葉の特徴は、似たようなことすべてを、ぐるっと囲んでひとまとめにすること。
そして、「料理」という文字の書かれたラベルを貼ることです。
――『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』より

 言葉とは、「完璧に定義されたもの」ではありません。
 似ているものをざっくりまとめるための道具なのです
 つまり、「料理」という言葉の中には、実はかなり幅がある。

 それなのに、人は自分の中の基準だけで、「これは料理」「これは料理じゃない」と決めてしまう
 そこから、すれ違いが生まれるのです。

人は「ラベル」を絶対視しすぎる

 本書では、最後にこう語られています。

ぐるっと囲んでひとまとめにするときに発生するのが、『どこから問題』です。
「ここからが料理」で「ここからは料理ではない」という境界がどこかにある。
「囲んで」という表現を使っているのは、そういう境界を意識してほしいからです。
ぐるっと囲んでひとまとめにすることは、一言でいうなら『カテゴリー化』です。
文字の書かれたラベルを貼ることは、『ラベリング』と呼ぶことができます。

こういう特徴があるからこそ、言葉は情報を効率よく伝える道具になります。
言葉の特徴は、情報を簡単に伝えるために必要です。
でも、残念ながら、この特徴こそが、『すれちがい』を生んでいる原因なのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』より

 これは、人間関係でもよく起きています。

「努力してる」「常識がある」「ちゃんとしてる」。こういう言葉も、人によって意味が違う。
 なのに、人は「自分のラベル」が正しいと思い込んでしまう

 だから、「それは料理じゃない」と断定したくなる。

言葉は便利だが、雑でもある

『言語化だけじゃ伝わんない』は、「言葉とは、世界をざっくり整理するための道具だ」と教えてくれます。

 だから便利です。ですが同時に、かなり乱暴でもある。

「料理」「常識」「普通」「努力」。こういう言葉は、一見わかりやすい。
 でも、その中身は人によってかなり違っています。

 だから、本当に大事なのは、「正しいラベルを貼ること」ではないのかもしれません。

「この人は、どこまでを“料理”だと思っているんだろう?」

 そうやって、相手の見えている境界線を想像すること
 それが、すれ違いを減らす第一歩なのです。

ヤギワタル
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。