一方で、クマが樹上死した情報もある。

 2010年11月中頃、秋田市の山間部で地元住民が、コナラのY字型の大枝の股にクマが引っかかって死亡しているのを発見、木を切り倒してクマを引き抜こうとしたら枝が裂けた。樹上にはクマ棚があって足を滑らして落ち、股に挟まったようだ。

 山野では、弱ったクマがこのようにして不慮の事故で死んでいるようだ。

 1935年7月29日付『北國新聞』によれば、富山県立山連峰剣沢で草を食べていた30貫(約112キログラム)ほどのクマの頭に落下してきた大石が当たり即死、アルピニストたちが剣沢小屋に運んで登山客30人ほどにクマ汁を振る舞ったそうだ。

 人間にも不慮の死があるように、クマたちも思いがけない死に方をしているようだ。でも、やはり山中でクマの自然死体は見ないものなのだ。

筆者が見てきたのは
殺された死体ばかり

 私はクマが「殺される」場面を何千回も見た。その状況を検分するのが私の業務だったからだ。四足歩行のクマは死ぬ瞬間、両の前足を揃えて伸ばし、その上にあごを乗せることがあった。その姿にクマは「祈る動物」だと思うようになった。

 母子グマが大勢の鉄砲撃ちに取り囲まれて撃ち殺された日、母グマが子グマの無事を祈ったように見えたことがあった。

 1994年4月、島根県Y村では、越冬している母子グマを予察的に駆除することになり、私も立ち合うことになった。

 広島県・島根県では、この頃になると見つけ次第即、駆除ではなく、状況を関係者で検討して判断するようになっていた。直近の人家から3キロメートルは離れていたし、子グマは寒さに弱くて母グマは守るために穴から出てこないので危険は少なく、私は「この時点での射殺は避けたい」と進言したが、地元の同意は得られなかった。

これから射殺される親子3頭グマこれから射殺される親子3頭グマ 同書より転載