県と町の担当者、ハンターたち一行の13人は、4メートルの距離で思い思いに母子グマを取り囲んだ。人間たちに取り囲まれても母グマは威嚇も攻撃もせず、なすがままに撃たれようとしていた。
「ちゃー、ちゃー」と泣き叫ぶ2頭の子グマたちを、母グマは長い舌で交互に舐めた。
「子煩悩じゃのう」
と、年配のハンターが悔いを漏らした。
鉄砲を突き出した若いハンターは引き金を引いた。
体を伏せる姿は何かを祈っているように見える 同書より転載
轟音と共に光が走り、母グマの眉間に小孔を穿った。眉間から流れ出た血が穴の床に滴り、真砂土の低い所を探すように細く流れ下って射手の前で止まった。
母グマは微動だにせず、自ら伸ばして揃えた両前足の上に頭を乗せて死んだ。
哀れな。何かに祈っている姿ではないか。
県庁の若い女性担当者の頬は、あふれる涙で濡れていた。
両手をきちんと揃えており、何かを訴えているように見える 同書より転載
『家に帰ったらクマがいた』(米田一彦 PHP新書、PHP研究所)







