医師でありながらMBAを取得し、経営理論を含めた医療・ヘルスケア業界全体のシステムマネジメント化を目指し、政策提言や講演活動を行う株式会社ミナケア代表取締役の山本雄士氏と、同業界のグローバル・エクセレント・カンパニーであるジョンソン・エンド・ジョンソンでトップマネジメントを務めてきた新将命氏が、医療・ヘルスケア業界の現状と課題、そして今後の展望について語ります。

あえて違う世界に飛び込んで

山本雄士(やまもと・ゆうじ)
医師・株式会社ミナケア代表取締役
1974年札幌市生まれ。1999年東京大学医学部を卒業後、同付属病院、都立病院などで循環器内科、救急医療などに従事。2007年Harvard Business School修了。
ソニーコンピュータサイエンス研究所リサーチャーを兼任。政策提言や講演活動を国内外で行いながら、教育活動として山本雄士ゼミを主宰している。
共著に『僕らが元気で長く生きるのに本当はそんなにお金はかからない』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など、翻訳に『医療戦略の本質』(マイケル・E・ポーターら、日経BP社)、『奇跡は起こせる』(ジョン・クラウリー著、宝島社)がある。

山本雄士(以下、山本) 新先生はジョンソン・エンド・ジョンソンにいらしたと伺っています。私は臨床の現場に6年ほどおりましたので、ジョンソン・エンド・ジョンソンの商品には大変お世話になりました。

新将命(以下、新) そうでしたか。私はジョンソン・エンド・ジョンソンの日本法人で4期8年社長を務めました。入社から数えたら12年籍を置きましたが、改めて考えてみても本当に素晴らしい会社です。

山本 私も非常にいい会社だと思っています。ハーバード・ビジネススクールに在籍中は、企業理念である「我が信条(Our Credo)」が手本としてよく引き合いに出されていました。

 信条や理念(クレード)、そして使命感を徹底して育むのはハーバードの特徴ですよね。

山本 そうですね。ハーバードは経営者を育てるためのスクールなので、いわゆるテクニカルなスキルよりもマインドセットやリーダーシップが重要視される傾向にあります。経営やマネジメントについて何もわかっていなかった私がまっさらな状態で飛び込んだので、そこで理念の重要性を教えられたという感じですね。日本人には馴染みの薄いノブレス・オブリージュ(注:高い地位にある者はそれに見合った責務を果たさなければならない、という考え方)を叩き込まれました。

 アメリカではMBAを取得した医師は多いけれど、日本では非常にレアケースですよね。

山本 ハーバードでMBAを取得した日本人医師は私が初めてだったと聞きましたが、仰るように海外では特にめずらしくありません。私がビジネススクールに行くと言うと周囲に驚かれましたが、臨床の現場で患者さんを治療するのではなく、医療業界そのものを治療したいという思いがあっての選択でしたので、医療から離れたという気持ちはありませんでした。