インベストメントバンカー M&A請負人の正体#11Photo:PIXTA

かつて“不夜城”と称された投資銀行部門の労働環境を大きく変えたのが、働き方改革だ。時間外労働に厳格な上限が設けられたことで、長時間労働に依存してきた従来の組織運営は転換を迫られ、各社は若手育成の強化を急いでいる。もっとも、その影響は一様ではない。現場では今なお月200時間を超える残業が常態化しているケースもあるほか、外資系と日系で異なる変化も生じている。連載『金融インサイド』内の特集『インベストメントバンカー M&A請負人の正体』の#11で、その真相を解明する。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

働き方改革で“不夜城”に変化も
今なお残る苛烈な長時間労働の実態

「ゴールドマン・サックス証券に入社した2000年当時と今を比べると、最大の変化は働き方改革だ」

 ゴールドマン・サックス証券の高鍋鉄兵投資銀行部門共同部門長は、毎晩徹夜同然で働いた自身の若手アナリスト時代を振り返り、そう述べる(本特集#3『ゴールドマン・サックス“名門”M&A部隊の新司令塔が明かす、「不世出の傑物」持田前社長退場後の成長&人材戦略』参照)。

 野村證券投資銀行部門のグローバル・ヘッドを務める武村努副社長も「適切な労働時間の範囲内で最大限の効率性を発揮できるようにすることが大前提だ」と話す(本特集#2『王者・野村に死角はあるか?投資銀行部門トップが激白、1000人の部隊で上場企業の9割を網羅する「勝利の方程式」』参照)。

 19年4月に施行された時間外労働の上限規制は、かつて“不夜城”と称された投資銀行部門の労働環境を変える転機となった。

 法改正前は、三六協定に特別条項を設ければ限度時間を超える時間外労働を課すことができた。だが改正後は、特別条項付き三六協定を結んでいても、時間外労働は年720時間以内、単月100時間未満、月45時間超は年6カ月までと制限され、違反には罰則も伴う。

 こうして働き方改革以降、若手の労働環境にも配慮したマネジメントが組織運営の前提となっている。

 もっとも、その影響は一様ではない。ある日系証券の社員は「働き方改革の影響は、外資系と日系で傾向が異なる」と指摘する。同じ投資銀行部門でも、組織構造や昇進プロセスの違いによって、影響の表れ方が変わるためだ。

 また、この業界から激務が消えたわけではない。ある外資系投資銀行のアナリストは「今でも月200時間超の残業は決して珍しくない。外資系に飛び込む以上、その実態を理解した上で覚悟して入社している人が多い」と明かす。

 もちろん、外資系投資銀行の中にも労働環境の改善が進み、残業がそれほど多くない職場はある。だが、一部では若手の長時間労働が今なお残っているのも事実だ。

 次ページでは、外資系と日系の投資銀行に今なお残る苛烈な勤務実態を、出社時間や退社時間、月残業時間の事例と共に公開する。加えて働き方改革のしわ寄せが意外な層に及んでいる実態や、ここ最近で若手育成がいっそう難しくなっている理由を明らかにする。