起業家が育たない国、日本

出雲 ミドリムシのことを多くの方に知っていただきたいとは思っていましたが、ベンチャーが大変そうだから嫌だとか、起業とか社長とか、そもそも自分の中に何のイメージもなかったんです。起業したいと思って起業したわけでもないので、とにかくミドリムシに導かれて起業することになり、気がついたらここまで来ていたという感じです。

 ご両親は起業に反対されたでしょう。

出雲 母は反対というわけではないのですが、精神的なショックでしばらく起き上がれなくなりましたね。

 日本で起業家はきわめて少ない。本当に少数派ですよ。なんで起業する人が増えないのかというと、一番の原因は腹が減っている人がいないからだと思うんです。今晩の飯に困っている人が少ないから、スティーブ・ジョブズじゃないですけど「Stay hugry」、つまりハングリー精神がない。ハングリー精神がないとアンビションは出ないしね。

出雲 ほかに原因はありますか?

「日本ではなぜ起業する人が少ないのか。一番の原因は、今晩の飯に困っている人が少ないからじゃないかな」。

 いろいろとあります。ハングリー精神の欠落に次いで2番目の理由が、大企業のドアが開かないということがあると思います。若者が「こういう商品を開発しました」とドアを叩くのだけれど、日本では大企業のドアはなかなか開かない。

 つまりどういう実績があるのか、社歴は何年か、年収はいくらかといった過去のレコードを気にしすぎていますよね。ニューエントラント、つまり新参者に対するドアが開かない。アメリカでは若者の話をとりあえず聞いてくれる土壌があります。

 日本は新参者に冷たければ、失敗者にもとても冷たい。一度失敗すれば周囲の人に「あいつはもうダメだ」と見なされるし、もちろん銀行はお金を貸してくれません。アメリカは失敗者に対してもう少し寛容ですよね。失敗から何かを学んだだろうと、もう一度手を差し伸べてくれますからね。