民間マネーのステーブルコイン、経済にリスクもたらす理由Photo:SOPA Images/gettyimages

「プライベートマネー(民間の通貨)」という言葉は、矛盾しているように聞こえる。経済を支えている通貨は典型的な公共財で、民間の資産ではないからだ。

 実のところ、米国には1800年代にもプライベートマネーがあった。それは今、ステーブルコインという形で復活を遂げつつある。ステーブルコインはドルに対する固定価値を維持することを目指した暗号資産(仮想通貨)だ。

 ステーブルコインを支持する人々にとって、それは暗号資産の「キラーアプリ」となる。ステーブルコインを使えば既存の銀行システムよりも迅速かつ効率的な決済が可能になるからで、特に国境を越えた決済では大きな威力を発揮する。

 だが、その一方でリスクもつきまとう。過去にプライベートマネーを試した時と同様に、金融危機を引き起こしかねないというリスクだ。

 昨年米国で成立したジーニアス法(ステーブルコインの規制に関する枠組みを定めた法律)と、現在米上院で審議されているクラリティー法(暗号資産の規制上の分類を明確にする法律)はいずれも、ステーブルコインの安全性向上や利用拡大を目指している。だが、いかなる法律もステーブルコインの設計に内在するリスクを完全に取り除くことはできない。

 ステーブルコインの発行体や関連プラットフォームの運営者は民間企業で、彼らは裏付けとなる保有資産、ユーザーへの「報酬」支払い、一定の活動の容認を通じて、ステーブルコインの利用拡大や利益追求を目指している。

 もちろん、利益追求とリスクテイクはあらゆるイノベーションの根幹で、それ自体は好ましい。しかし金融の世界では、イノベーションは常に行き過ぎを招き、突然の信頼喪失、取り付け騒ぎ、実体経済の破壊といった事態につながりうる。

マネーとは何か?

 マネーにはいくつかの機能がある。価値の保存、取引価格の計算単位、取引の媒介などだ。米ドルはこれらすべての条件を満たしており、米連邦準備制度理事会(FRB)がその発行を管理している。

 しかし、民間の組織が通貨の独自版を作ろうとした場合、それを禁じるものは何もない。暗号資産は長らくそれを目指してきた。だが、ビットコインなど初期の暗号資産は裏付け資産が何もなく、その価値は激しく変動した。