ここで申し上げたいのは、AIエージェントの設計、分業の線引き、どのベンダーを選ぶか、どの機能を実装するかといった、本連載で扱ってきたテーマのすべてが、実のところ倫理の問題を含んでいる、ということです。Anthropicのような企業でも揺らぐAI時代においても、プロダクトを作り、導入し、運用する企業側は、最後の判断者として残ります。倫理はコストや制約ではなく、プロダクトの持続可能性を決める設計要素の1つです。

AIの時代に
人間が担い続けるもの

 連載の最後に、読者への問いを1つ残して終わりたいと思います。

 自社で運用するAIエージェントは、ユーザーの自律性を損なってはいないか。意思決定のプロセスが、説明可能な形で記録されているか。特定の属性のユーザーに不利益を強いてはいないか。そして何より、そのプロダクトは、誰かを傷つけていないか。

「AIエージェントとは何か」を最初に問うた私たちは、最後にこの問いにたどり着きます。AIに任せる範囲を設計するということは、同時に、人間が担い続ける責任の範囲を設計することでもあります。その設計を、ベンダーにも、規制にも、企業の法的構造にも丸投げすることはできません。今回のAnthropicの事例は、私たちにそのことを教えてくれました。

 AI時代に人間が担い続ける役割の1つは、倫理を守ることです。そしてそれは外側から与えられるものではなく、プロダクトの設計と運用の細部に、自分たちの手で組み込むしかありません。

(クライス&カンパニー顧問/Tably代表 及川卓也、構成/ムコハタワカコ)