3.通勤時間を「ただの移動」で終わらせない

 通勤時間を、ただ耐えるだけの時間にしてしまうと、ストレスばかりが目につきます。そこで有効なのが、通勤時間を別の目的の時間に変えることです。

 たとえば、落ち着いた音楽を聴いて、心をリラックスさせる時間にする。気分が上がる音楽を聴いて、仕事前のウォームアップにする。オーディオブックやポッドキャストを聴いて、学びの時間にする。英語学習アプリを使って、短い勉強時間にする。こうした工夫をすると、通勤は「ただ混雑に耐える時間」ではなくなります。

 カナダのヨーク大学のデビッド・ウィーゼンタールらは、車通勤者を対象に、好きな音楽を聴いて通勤する条件と、音楽を聴かない条件を比較しました。その結果、特に混雑した通勤状況では、自分で選んだ音楽を聴くことがストレスを和らげる可能性が示されています。

 この研究は車通勤を対象にしたものなので、電車通勤にそのまま当てはめることはできません。ただ、通勤中に意識をストレス源からそらす工夫として、音楽やオーディオブックを活用するのは十分に意味があるでしょう。

 もちろん、通勤中に仕事のメールを見すぎると、かえって出社前から疲れてしまうこともあります。通勤時間を有効活用することと、仕事を前倒しで詰め込むことは別です。自分の気分が整う使い方を選ぶことが大切です。

 通勤は、単なる移動ではありません。会社に着く前のコンディションづくりです。満員電車で削られた集中力は、そのまま午前中の仕事に響きます。

 だからこそ、通勤を根性で耐える時間にせず、できるだけ消耗しない時間に変えていきましょう。混む時間を避ける。疲れにくい席や立ち位置を選ぶ。音楽や学習の時間に変える。こうした小さな工夫の積み重ねが、出社後のパフォーマンスを守ってくれるのです。

【参考文献】
Evans, G. W., & Wener, R. E. (2007). Crowding and personal space invasion on the train: Please don’t make me sit in the middle. Journal of Environmental Psychology, 27, 90–94.
Lucas, J. L., & Heady, R. B. (2002). Flextime commuters and their driver stress, feelings of time urgency, and commute satisfaction. Journal of Business and Psychology, 16, 565–572.
Wiesenthal, D. L., Hennessy, D. A., & Totten, B. (2000). The influence of music on driver stress. Journal of Applied Social Psychology, 30, 1709–1719.
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