「A案件、昨日から手が止まっているように見えるけど、確認待ちで止まっている?」
「今日は少し顔色が悪いけど、午後の打ち合わせは誰かに代わってもらおうか?」
「この資料、締切までに少し厳しそうなら、優先順位を一緒に整理しようか?」
こう聞かれれば、部下も答えやすくなります。「実はここで止まっています」「少し体調が悪いです」「優先順位に迷っています」と言いやすくなるからです。
二流の上司は、部下に丸投げの質問をします。一流の上司は、部下の様子を観察し、仮説を持って、具体的に声をかけます。この違いは非常に大きいのです。
小さな変化を見抜く
一流上司の「観察力」
優れた上司は、部下の小さな変化に気づこうとしています。体調が悪そうなのに、いつも通り残業を求める。明らかに作業が詰まっているのに、「本人が何も言ってこないから」と放置する。こういう対応を続けていれば、部下から信頼されるはずがありません。
仕事ができる上司は、相手の変化を観察する力があります。表情、声の調子、動きの遅さ、反応の鈍さ。そうした手がかりから、相手がどんな状態にあるのかを感じ取ろうとします。
ハーバード大学のヒラリー・エルフェンベインとナリニ・アンバディは、非営利団体に勤める69名を対象に、表情や声などから感情を読み取る力と、職場での評価との関係を調べました。研究では、感情を読み取る力が職場での評価と関連することが示されています。
もちろん、これは「相手の心を何でも見抜ける」という話ではありません。大切なのは、表情や声の変化に気づき、それを必要な配慮や確認につなげることです。部下の感情を決めつけるのではなく、「何かいつもと違う」と感じたときに、具体的に確かめる。その姿勢が重要なのです。
上司の中には、「最近の若者は何を考えているのか、さっぱりわからない」とこぼす人がいます。たしかに、世代が違えば、価値観も言葉の使い方も違います。仕事への考え方、コミュニケーションの取り方、プライベートとの距離感も、昔とは変わっているでしょう。
しかし、「わからない」で終わらせてしまえば、何も変わりません。上司側に必要なのは、若い部下を一方的に評価することではなく、相手の状況を知ろうとする姿勢です。日頃から短い会話を重ね、相手がどんな仕事でつまずきやすいのか、どんなときに表情が曇るのかを見ておく。そうした積み重ねがあって初めて、部下の変化に気づけるようになります。
これは、学校の先生にも通じる話です。二流の先生は、授業中にざっと説明してから「わからない人いる?」と聞きます。しかし、生徒はなかなか手を挙げません。わからないと知られるのが恥ずかしいからです。すると先生は、「みんな理解したようだから、先に進みます」と判断してしまう。
一方、優れた先生は、生徒の表情や手の止まり方を見ています。困った顔をしている生徒がいれば、「念のため、もう一度ここを説明します」と、相手が言い出す前に補います。
上司も同じです。部下が困ってから申告するのを待つのではなく、困っていそうな兆候に気づく。そして、部下が答えやすい形で声をかける。これが、一流の上司の対応です。







