心理学では、怒りをうまく扱う技術を「アンガーマネジメント」と呼びます。「アンガー」は怒り、「マネジメント」は管理という意味です。つまりアンガーマネジメントとは、怒りをなかったことにする技術ではなく、怒りに振り回されず、適切に扱うための技術です。
しかも、これは生まれつきの才能ではありません。後天的に学べるスキルです。「私は短気だから無理」と諦める必要はありません。怒りっぽい人でも、練習によって反応の仕方を変えることは十分に可能です。
米ロヨラ大学のジョセフ・ダーラックらは、学校で行われる社会性・情動学習プログラムに関する213件の研究を統合し、こうした教育が子どもの社会的・感情的スキルや行動面にプラスの効果を持つことを示しています。怒りの扱い方も、こうした感情スキルの一部として学べるものだと考えられます。
イラッとした瞬間に
自分をなだめる実践技
では、イラッとした瞬間に何をすればよいのでしょうか。
まずやりたいのは、「今、自分は怒っている」と気づくことです。
怒りに飲み込まれているとき、人は自分が怒っていることにすら気づけません。「相手が悪い」「失礼だ」「許せない」と、外側のことばかりに意識が向いてしまいます。そこで一度、「あ、今かなり腹が立っているな」と自分の感情に名前をつけてみるのです。
これだけでも、怒りとの距離が少しできます。怒っている自分を、少し外側から見られるようになるからです。
次に有効なのが、深呼吸です。
イラッとした瞬間は、体も緊張しています。呼吸が浅くなり、肩に力が入り、声も強くなりやすい。そこで、ゆっくり息を吸い、ゆっくり吐く。これを3回ほど繰り返すだけでも、反射的に言い返すことを防ぎやすくなります。
数を数えるのも効果的です。
「いち、に、さん」と急いで数えるのではなく、「いーち、にーい、さーん」と、心の中でゆっくり数えます。怒りの対象に向いていた注意を、数を数えることに少し移すのです。たった数秒でも、怒りに任せた反応を避けるための時間稼ぎになります。
もうひとつは、自分に声をかけることです。
「落ち着こう」 「今すぐ言い返さなくていい」 「ここで強く言うと、あとが面倒になる」 「まずは相手の話を最後まで聞こう」
このように、自分に向かって短く言葉をかけます。自分で自分をなだめるようなものです。これはセルフトークとも呼ばれる方法で、感情を整えるうえで役立ちます。
怒りが少し落ち着いた後であれば、信頼できる人に話すのもよいでしょう。ただし、ここには注意が必要です。
「本当に腹が立った」「あの人は最低だ」と悪口を延々と話していると、怒りが収まるどころか、かえって強くなることがあります。感じのいい人がやっているのは、怒りを増幅させる愚痴ではありません。自分が何に反応したのか、次にどう対応すればよいのかを整理するための相談です。
「さっきの言い方に少し傷ついた」 「自分はあの一言に反応したのだと思う」 「次はその場で言い返すのではなく、落ち着いてから確認しよう」
このように話すと、気持ちが整理されます。怒りをぶつけるためではなく、冷静になるために話すのです。
感じのいい人は、怒らない人ではありません。怒ったときの扱い方がうまい人です。
だれに対してもニコニコしていて、いつも穏やかに見える人がいます。そういう人に「腹が立つことはないんですか」と聞けば、おそらく「そんなわけないでしょう」と返ってくるはずです。
感じのいい人にも、腹が立つことはあります。ムカッとすることもあります。ただ、その怒りをすぐに顔や言葉へ出すと、相手との関係が悪くなることを知っているのです。







