不機嫌な顔を見せれば、相手も身構えます。きつい言葉を返せば、相手も反発します。一度こじれた関係を戻すには、かなりの時間がかかります。だからこそ、感じのいい人は、最初の数秒を大切にします。

・イラッとした瞬間に、すぐ反応しない。
・まず気づく。
・深呼吸する。
・数を数える。
・自分に声をかける。
・必要なら後で冷静に相談する。

 こうした小さな工夫が、怒りを人間関係のトラブルに変えないための防波堤になります。

 怒りっぽさは、まったく変えられないものではありません。怒りや攻撃的な行動に関する専門的な介入を扱った研究でも、適切な支援や訓練によって、行動が変化しうることが示されています。

 たとえば、米メリーランド大学のキャシー・タフトらは、パートナーへの暴力歴がある男性を対象に、認知行動療法グループ治療に関わる要因を調べています。これは一般的な怒り対策と同列に扱うべきものではありませんが、怒りや攻撃的行動は、適切な介入によって変化しうることを示す研究の一つです。

 もちろん、暴力や深刻な怒りの問題がある場合は、自己流で抱え込まず、専門家の支援を受ける必要があります。ただ、日常生活の中で「つい不機嫌な顔をしてしまう」「強い言い方をしてしまう」という程度であれば、まずは小さな感情コントロールから始めることができます。

「反応」は自分で選ぶ
後悔しない怒りの作法

 感情コントロールは、周囲のためだけに必要なものではありません。自分自身のためにも必要です。

 怒りに任せて言い返すと、その瞬間はスッキリするかもしれません。しかし、後になって「あんな言い方をしなければよかった」と後悔することもあります。相手との関係が悪くなれば、仕事もしづらくなります。家庭や友人関係でも、余計な摩擦が増えてしまいます。

 反対に、怒りを感じても少し間を置ける人は、人間関係の摩擦を減らしやすくなります。周囲からも「落ち着いている人」「感じのいい人」と見られやすくなります。

 感じのいい人が特別に怒らないわけではありません。

 怒りを感じた瞬間に、反応を選んでいるのです。

 イラッとしたら、すぐに言い返さない。まず深呼吸をする。心の中で数を数える。「落ち着こう」と自分に声をかける。

 たったそれだけでも、怒りに振り回される回数は少しずつ減っていきます。

 感情をコントロールできる人は、人間関係を壊しにくい人です。感じのよさは、生まれつきの性格だけで決まるものではありません。イラッとした瞬間の小さな対応の積み重ねで、いくらでも磨くことができるのです。

【参考文献】
Durlak, J. A., Weissberg, R. P., Dymnicki, A. B., Taylor, R. D., & Schellinger, K. B. (2011). The impact of enhancing students’ social and emotional learning: A meta-analysis of school-based universal interventions. Child Development, 82, 405-432.
Taft, C. T., Murphy, C. M., King, D. W., Musser, P. H., & DeDeyn, J. M. (2003). Process and treatment adherence factors in group cognitive-behavioral therapy for partner violent men. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 71, 812-820.
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