アマゾンはECサイトとして、品揃えの重要性を認識していた。日本では楽天やヤフーなどの競合企業があるが、品揃えで負ければ、顧客は他社に逃げてしまう。しかし、年に1~2回しか注文が入らないロングテール部分までアマゾンが自社で持てば、在庫コストが高くなり、経営効率が悪くなる。すなわち、ユーザーのための品揃えと、在庫効率の間にトレード・オフがあったのである。

 そこで考案されたのが、マーケットプレイスであった。アマゾン自身は売れ筋商品を中心に品揃えを行い、ロングテール部分を外部業者に任せることによって、品揃えと在庫効率のトレード・オフを解消したのである。

 そして2006年には、アマゾンが在庫を引き受け、配達を代行する「フルフィルメントby Amazon」を始めた。アマゾンとフルフィルメント契約をすると、業者は在庫をアマゾンに預け、配達もアマゾンに頼めるため、ユーザーには早く届き、受注もアマゾンに任せられる。これによってアマゾンは、マーケットプレイスの手数料に加えて、フルフィルメントの手数料も受け取ることができるようになった。

「安全>効率」を徹底する
東京ディズニーリゾートの哲学

 企業レベルでは、品質とコストなど、日常的にトレード・オフに直面しているが、企業の指針として、トレード・オフにある要素の優先順位を、前もって明示している企業もある。例えば、優先順位を公表している会社として、ジョンソン・エンド・ジョンソンや東京ディズニーリゾート(TDR:運営会社名はオリエンタルランド)が挙げられる。

 J&Jでは、クレド(Credo:我が信条)で、会社が守るべき優先順位として、『顧客>従業員>社会>株主』の順序をホームページ上でも開示している。

「迷ったら、顧客の利益を優先する」ということで、このクレドは1943年に制定されて以来、CEOが変わろうとも変更されず、企業の中核的考え方になっている。今でも毎年、全従業員にクレド研修がなされ、受講終了時には、各自がクレドを遵守することを約束し、サインすることが続けられている。