この優先順位は、人の命を守る医薬品企業としては納得しやすいが、もし顧客の利益と株主の利益が一致する方法が見つかれば、優先順位を意識しなくても、業務は円滑に進むはずである。
またTDRでも、「The Five Keys~5つの鍵~」と呼ぶ行動規準で、『安全>礼儀>インクルージョン>ショー>効率』という優先順位が示されている。
この考え方が現場第一線のキャスト(スタッフ)にまで徹底されていたことから、東日本大震災時に、キャストが自発的に売り物の毛布を、入園客に無償で提供したエピソードは有名である。
またビッグサンダー・マウンテンに乗るために、遠くから修学旅行で来園した客がいたとしても、不具合が見つかれば停止、休止させ、人気の高い午後3時のパレードも、熱中症で観客が倒れる危険性が高いと判断されれば、中止することもある。安全が第一であるからだ。
ただしTDRの場合も、安全と効率が両立するような仕組みができれば、この優先順位を意識しなくても、問題なく運営できることになる。
「サービス第一、利益第二」を
超えたヤマト運輸の進化
ちなみに前述したヤマト運輸の宅急便も、事業開始時に当時の小倉昌男社長が唱えたスローガンは、「サービス第一、利益第二」であった。物流事業に精通していた小倉社長は、宅急便事業を始めるにあたって、サービス水準と利益が相反することがわかっていた。
『トレード・オン思考 トレード・オフを乗り越える「第3の道」』(山田英夫、KADOKAWA)
しかし「両方追求しろ」と号令を出せば、現場の混乱は目に見えていた。夜8時に配送所に未配達の荷物があった場合、A君はこれから配達に向かい、顧客満足は高まるが、会社の利益は減る。B君は「今日の配達は止め、明日にしよう」と決め、これによって利益は減らないが、今日届くと期待していた顧客満足は下がる。
このようにトレード・オフにあるものを、ただ「両方追求しろ」と唱えると、従業員の行動がバラバラになってしまう。そこで小倉社長は、従業員が迷わないように、「サービス第一、利益第二」を唱えたのである。
その後、配達時間指定という画期的な仕組みを導入したことによって、優先順位を唱えなくても、サービスと利益は両立するようになったのである。
以上のように、優先順位を定め、一方を選択し、一方を諦めることは、その場その場ではベストを尽くしているように見えるが、長期的に見て根本的な解決をしているとは限らないのである。







