「毎日、誰かが死ぬ」極限状態→母役・水野美紀が伝えた「力の源」に共感しかない…〈風、薫る第48回〉

さみしいと言えるようになった直美

 りんがシングルマザー(当時、この言葉はまだない)であることを丸山は知らなかった。

 こんなに長く一緒にいたのに、りんは自分の個人情報を患者・若林に語らず、直美たちも他者の個人情報を語らなかった。そこは職業意識や倫理観がしっかりしている。

 若林はりんに好意を持っていたにもかかわらず、彼女の情報を得ようともしなかった。りんの妹・安(早坂美海)が槇村宗一(上杉柊平)と初対面でまっさきに、既婚か未婚か確認していたこととはえらい違い。若林、なんて控えめなやつなんだろう。いやむしろ、そのほうが好感度が高い。

 りんは気まずさを誤魔化すように「でも、せっかくの退院の日なのに、大家さんはお休みで残念でしたね」と話題をそらす。そこに出てくる私服の直美。立ち聞きしていたのだ。

 直美は若林に住むところを紹介するという。口も態度も悪いが、いい人なのだ。でも、「これも仕事のうちだから。いい? 看護の優しさは仕事。分かった」とぶっきらぼう。

 直美が若林を連れて来たのは教会。

「俺、一生ついていきます」と吉江(原田泰造)にぺこぺこする丸山。直美にも「一生ついていきます」と言っていたのに変わり身が早い。お人好しの子分体質だ。そんな彼をいつのまにか直美は「チュウ」(丸山忠蔵だから)と呼んでいる。

 吉江は長屋を紹介。長屋の人たち(全員、大家姓)はみんな親切で、家賃も心配ない。

「私らはね、直美ちゃんの東京のお母さんだから」と住人に聞いて、そこで丸山ははじめて、直美の生い立ちを知る。

 りんと直美の個人情報をそれまで知らなかった丸山。

 つまり丸山は、患者から、直美やりんのプライベートの領域に踏み込んだことになる。

 患者なだけだったら、千佳子(仲間由紀恵)のように、もう二度と会わないほうがいいわけで。丸山はそうはならなかった。まあ千佳子は患者としてりんとプライベートも分かち合っていたけれど。

 直美が「チュウ」呼びなのも、もう患者ではないという意味合いだろう。

 吉江は、直美が看護婦に向いてそうだと安堵する。息をするのが以前より楽そうに見えるのは「仲間ができたからかもしれませんね」と推察。

 直美「寮はいつもにぎやかなんで、さみしくなくなっただけかも」
 吉江「さみしいと言えるようになったんですね」
 直美「はい」

 直美と吉江は安心して本音が語り合える関係だから、会話がスムース。

 このふたりの会話を聞くと、前回までの、シマケン(佐野晶哉)や喜代(菊池亜希子)やツヤ(東野絢香)の噛み合わない会話は意図的なものであろうと推察できる。

 女性の生き方問題が語られるのは、このあとだ。