
安の専業主婦願望
休日、りんは家に帰る。そこで安の縁談話を聞かされる。
「東京府にお勤めで、堅実ですてきな方だわ」と美津(水野美紀)が絶賛する相手は槇村(林裕太)の兄。
「はじめて会ったとき、環(宮島るか)にしゃがんで話しかけてくれて、環も怖がらずにすぐに懐いて」と安は自分の気持ちよりも相手が環に優しかったことを最優先している。まるで環のお母さんである。
結婚もそんなに急がないと気を使うのは、環を置いていくことが心配なのだ。
「3人(美津とりんと環)を置いて私だけすぐ幸せになるっていうのは」
いやいや、安はこれまでずいぶん、自分の幸せを後回しにしてきたことを、視聴者は知っている。出番だってほとんどなかったじゃないか。もう48回(3分の1)もたったというのに。
いつも安に任せっきりの環とおままごとをして遊ぶりん。
りん「環、おままごとだけど、お料理の手順よく覚えてる。安のおかげ」
安「いい奥様になりそうでしょ」
「奥様か」としみじみするりん。かつては彼女も「奥様」だった。少女の頃は、安とふたりで女の一生双六で、あがりの「奥様」を目指していた。
いまは看護婦。「私も本当に看護婦に向いてるのかは分かんないけど、でも、好きな気持ちは変わんないかな」と、ゆきが辞めたことで、看護婦という仕事に対して少し気持ちが揺らいでいる。
安は「いくら好きな仕事だって、結婚して、旦那様に養ってもらうほうが安心じゃない」と言う。
「私は働いて生きていくなんて考えられない。堅実な仕事に就いてて、子どもにも優しくて、家柄も悪くなく良すぎず、ついでに、ややこしそうな小姑もいない。宗一さんみたいな人の奥様になるのが、結局、一番幸せになれると思う」
「姿かたちもいいのよ。まあ弟が浮ついてるのが少し心配だけど」
現代でも、安のような考えの女性はいるだろう。というか、宗一みたいな人がいれば、そりゃ専業主婦になる。
令和のいま、ジェンダー平等の機運が高まっている。ちょっと前は専業主婦願望の強い女性も意外と多いと言われていた。不況が続くなか、理想と現実は開くばかり。
令和4年10月4日 内閣府男女共同参画局の女性活躍に関する最近のデータでは、以下のように記述がある(https://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/keikaku_kanshi/siryo/pdf/ka17-1.pdf)。
専業主婦になれるならなりたい。でもなれない。それが令和。
そして、りんたち明治の女性は、やっぱり専業主婦が理想だが、社会がそうさせてくれなくなっている現代のはじまりのようなところに立たされている。
美津は「旦那様もご一新前のご苦労続きの頃は、幼いりんをよく抱いて寝ていました」と思い出し、「子を育てるのは大変なことも多いけれど、その分、子からもらう力もあるのです。その手の小ささ、温かさ」と語る。
りんは環の小さな手のぬくもりを吸収するかのように、いつまでも握りしめる。
ゆきは自分に看護婦が向いていないと自覚して潔く辞め、直美は看護婦になったことで仲間や患者と触れ合って意固地な心がほどけはじめた。りんは仕事の悩みや疲れを娘・環に癒やしてもらい、と同時に働くモチベーションにもしている。
それぞれの生き方、どれも一理ある。








