「Will」優先のリスタートをするためのポイントは…

 私が65歳からリスタートできた主な要因は2つあります。

 1つ目は50代半ばに「学び直し型パラレルキャリア」として社会人大学院で学んだことです。ビジネスパーソン時代は財務・IR・事業管理といった数値系の仕事が中心でしたが、キャリアの第2ステージでは人材系の仕事をしたいという思いや志があり、キャリアカウンセラーの資格を取得したのち、学びを深めるために社会人大学院のカウンセリングコースに進みました。それが59歳での大学教員への転身につながりました。

 2つ目はお金の追求のみに追われることがないようなマネープランを立てたことです。金銭面でのMust(制約)が大きいと、自身の好きなことに取り組めなくなります。金銭面の制約をできる限り排除するように準備をしました。キャリアカウンセリングの幅を広げるためにFPの資格も取得しましたが、それを生業として活用するよりも、資格は自身のファイナンシャルプラン実行のために活かしました。

 就職や転職時に考慮すべき「Will・Can・Must」のフレームワーク(モデル)がありますが、できるだけ、Will(やりたいこと)を優先できるように戦略的にマネープランを考え、特に金銭面でのMust(制約)を極小化しておくことがキーとなります。お金の不安があるとWillを追うことは現実的でなくなるからです。65歳からは、本来もらえる年金(基礎年金+厚生年金)を受給できるようになるので、大きな収入を必要としない点も追い風となります。

ミクロとマクロの往還によるパラレルキャリア的効果

 今年の4月からは、大学生向けキャリアカウンセラーの仕事に、大学での講師の仕事が加わりました。2つの仕事(役割)に並行して取り組むことを通じて、「パラレルキャリア」の持つ相乗効果を実感しています。

 カウンセリング(個別・微視的)で得た「いまの若者の働くことや就職活動に対するリアルな悩み」を、講義(集団・巨視的)において、「事例」として還元。逆に、講義で伝えた「キャリア理論」をカウンセリングで個別にかみ砕いて適用することができるからです。このミクロとマクロの往還こそがパラレルキャリア的効果と考えられます。

 例えば、大学3年・4年の学生とのキャリアカウンセリングで把握した最新の就職環境や体験談(個人情報ではない一般情報)などを、2年生向け授業の内容に盛り込むことが、進路決定に向けてのヒントになることもあります。

 仕事や働く意味について講義をするなかで、同じ仕事内容であっても、嫌々やる仕事は「死事」、志を持ってする仕事は「志事」であり、同じ能力であっても、マインドセットや目標の設定次第で成果が大きく異なる、といったことを具体例も交えながら話を展開していくと、学生の興味度も理解度も大きく変わってきます。捉え方や意味づけの大切さへの理解が次のステップである行動変容につながるケースを目にすることは、大学生とかかわる者にとって何よりも嬉しいことです。

 複数の役割(カウンセラー×講師×執筆)が相乗効果を生み出す点に、パラレルキャリアの真髄があると感じています。