
ここ数年で、企業におけるAI活用への関心が急速に高まっている。特に注目されているのが「生成AI」だ。多くの企業では業務効率化などの目的で導入が進み始めた。人事部門でも採用や評価に生成AIを活用するケースが増えている。とはいえ、具体的な使い方や成果については、「いまひとつ分からない」という声もある。中堅・中小企業のコーポレート部門向けにAI導入・活用支援を手がける、一般社団法人社会整備サポート協会の河合一広さん(代表理事)に、人事部門におけるAI活用の現状と課題、取り組みのポイント、そして、今後の可能性について話を聞いた。(ダイヤモンド社 人材開発編集部、撮影/菅沢健治)
急速に進むAI導入だが、実際の活用はこれから
2022年からChatGPTをはじめとする「生成AI」が登場し、いまや「第4次AIブーム(*1)」に入ったといわれる。生成AIは膨大なデータを自動的に学習し、人間が自然に感じられる文章などを作成する。従来のAIが「データの分析・分類」を得意とするのに対し、生成AIは「指示をもとに表現物を生み出す」ところに特徴がある。
*1 総務省「令和6年版 情報通信白書」によれば、第1次AIブームが1956年~1970年(推論・探索の時代)、第2次AIブームが1980年~1995年(知識の時代)、そして、2010年からが第3次AIブーム(機械学習の時代)となっており、2022年からの第4次AIブーム(生成AI)につながっている。
NTTドコモ モバイル社会研究所の調査では、2026年2月時点で、15~69歳における生成AIの利用率が51%に達し、2025年2月時点の27%から、ほぼ倍増している。
企業においても生成AIの導入が加速している。財務省の調査(「地域におけるAI活用を巡る現状」2026年3月時点)では、AIを「現在活用している」企業の割合は75%に達し、約5年前の11%から約7倍に増加した。しかし、実際には「AIのアカウントを配布しただけ」というケースも多い。こうした状況は人事部門でも同じだと河合さんは指摘する。
河合 これまでも、一部企業の人事部門では勤怠管理や給与計算の自動化、社内からの問合せ対応などにAIを利用しており、最近は生成AIを採用活動における書類審査や面接に活用する動きもみられます。企業関係者と話をしても、「AI? 当社はもう使ってますよ」という声をよく聞きます。
ただ、そもそも、AI活用の目的が業務効率化だけでいいのか? いまや、どの企業も少子化にともなう人材不足と採用難、そして、人材育成と定着が大きな経営課題です。「人的資本経営」がこれだけ注目されているのも、人材の定着と生産性改善が重視されるようになったからです。人事部門のAI活用は、まず、そうした大きな視点から捉えることが必要です。

河合一広 Kazuhiro KAWAI
一般社団法人社会整備サポート協会 代表理事
愛知県出身。1988年 富士銀行(現みずほ銀行)入行。国内本店・支店および海外で勤務。2004年ドイツ銀行グループに参加。2012年一般社団法人社会整備サポート協会設立。コンプライアンス教材のカスタマイズやeラーニングシステムを開発し、上場企業や非上場企業のコンプライアンス強化、ガバナンス体制企画・運営事業を展開。2015年からAIモデルのカスタマイズ開発事業を開始。AI監査や信用リスクモデルの構築、離職確率の予測、発注・需要予測など定量データをAIで分析する業務を手がけるとともに、有価証券報告書、決算説明書などの開示資料の定量化による差別化提案や、アンケート、サーベイといった言語データを定量化するモデルの開発にも取り組み、ガバナンスリスクの予測や人的資本経営の可視化、経営効率化など、AIを活用した経営課題の解決に貢献。







