「不老」追い求めるプーチン氏、4兆円投入の内幕ILLUSTRATION: BARRY BLITT FOR WSJ

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が中国の習近平国家主席に対し、臓器を交換することで人間は不老不死を達成できるかもしれないと話したのをマイクに拾われた時、このやり取りを老いた強権指導者たちの奇妙な雑談として一蹴する人もいた。

 実際には、プーチン氏は昨年9月の北京での軍事パレードにおける会話の中で、ロシア政府が支援する長寿への取り組みについて説明していたとみられる。この取り組みは同国の主要な科学プロジェクトの一つとなっている。

 ジェフ・ベゾス氏、サム・アルトマン氏、ピーター・ティール氏といった米シリコンバレーの億万長者たちと同様に、プーチン氏は長年にわたり抗老化(アンチエイジング)研究に強い関心を寄せてきた。だがロシアでは、衰えを食い止めようとするプーチン氏の取り組みは今や国家の優先事項となっており、その手法は臓器プリンティング、ミニブタの活用、体を極低温にさらす治療など、広範囲に及んでいる。

 ロシア政府は4月、プーチン氏による260億ドル(約4兆1500億円)規模の長寿推進イニシアチブ「健康維持に向けた新技術」の一環として、細胞の老化を遅らせる遺伝子治療法を科学者たちが開発中だと発表した。

 もう一つの有望とされる手段は、移植用臓器を作製するというもので、プーチン氏が北京でも語った寿命延長に向けた革新的技術の一つだ。こうした取り組みは全て、同氏が2024年に打ち出した国家長寿イニシアチブの一環であり、2020年代末までに17万5000人の命を救うことを目指している(この数字には、戦時下を想起させる不吉な響きがあった。批評家らが当時指摘したように、ウクライナ侵攻におけるロシア軍の兵員損失に関する独立機関の推計とほぼ一致していたからだ)。

 プーチン氏に指名されたロシアの政府系科学者たちは、二つの主要技術に注力してきた。生体組織の3D印刷である「バイオプリンティング」と、ヒトと遺伝子的な適合性が高いとされるミニブタの体内でヒトの臓器を育てる「ゼノトランスプランテーション(異種移植)」関連の技術だ。政府機関と連携する科学者たちは、ヒトの軟骨組織とマウスの甲状腺のバイオプリンティングに成功したと主張しており、2030年までにヒトの臓器交換の実現を目指している。ブタの体内で臓器を育てることについても、同様のスケジュールで議論が進められている。

「ロシア連邦では、この分野における幅広い科学プログラムの研究が進められている」と、ロシア大統領府の報道部門は電子メールで述べた。「これらのプロジェクトは国家の支援を受けており、多くの科学・研究機関が参加している」

 ロシアの長寿推進への取り組みは、プーチン氏に近い2人の人物が主導している。国家支援の遺伝学プログラムを監督する内分泌学者で同氏の娘のマリア・ボロンツォワ氏と、ソ連時代に設立された原子力研究で知られる「クルチャトフ研究所」の所長で物理学者のミハイル・コワルチュク氏だ。