あなたの職場の上層部に、なぜか仕事のできない人が居座っている――そんな組織の謎を解き明かすのが、世界的ベストセラー『[新装版]ピーターの法則』だ。本書を読めば無能な上司が生まれる仕組みがわかり、出世への向き合い方が一変するだろう。本連載では、本書の内容から、なぜあなたの職場が無能だらけなのかをお伝えしていく。(構成:ダイヤモンド社書籍編集局)

無能な上司のイメージPhoto: Adobe Stock

なぜ無能が出世するのか

 誰もが一度は、なぜあの人が管理職なのかと首をかしげた経験があるだろう。

 本書が示すのは、人は有能であるかぎり昇進を重ね、やがて力を発揮できない無能レベルに行き着くという法則だ。

 つまり組織は、放っておけば無能な人材で埋まっていく宿命にある。

 ところが本書には、この法則を認めたくないあまり、なんとか例外を探そうとする人が後を絶たないと書かれている。

 その代表が、明らかに使えない社員が上のポストへ移っていくケースだ。

 本書はこうした「見かけだけの例外」を検証し、昇進に見せかけた人事、すなわち擬似昇進を三つの型に分けて解説していく。

上のポストへ祭り上げる

 一つ目は、本書で「強制上座送り」と呼ばれる人事だ。

 これは、お荷物社員を上の役職へ移し、いかにも出世したように見せかける手口である。

 だが冷静に見てほしい。その社員は責任の重い仕事に就いたわけでも、仕事量が増えたわけでもない。

 生産性の低い地位から、別の生産性の低い地位へずらされただけなのだ。

 では、なぜ企業はわざわざこんな手間をかけるのか。

 本書によれば、過去の人事の失敗を隠せること、ほかの社員に「自分にもチャンスがある」と思わせて意欲を保てること、無能でも社内のノウハウを外へ流出させずに済むこと――この三つの利点があるからだという。

しかし、擬似昇進の主たる狙いは、階層社会の外にいる人間を欺くことです。はたで見ている人をだませれば、作戦は大成功というわけです。(『[新装版]ピーターの法則』より)

 本人だけが「昇進した」と喜び、事情を知る周囲は冷ややかに眺めている。それが祭り上げの実態なのである。

肩書きだけの水平異動

 二つ目は「水平異動」だ。これは階層を昇らせるのではなく、無能な社員に長々しい肩書きを与えて社内の片隅へ移す人事である。

 給料も地位もほとんど変わらないのに、肩書きだけが立派になるのがこの手口の特徴だ。

 本書には、回覧文書のコピーを管理させるためだけに「社内コミュニケーション統合部長」というご大層な役職を新設した会社の例が紹介されている。

階層を昇るでもなく、しばしば給料も据えおかれたままで、無能な社員が新しく長ったらしい肩書きを与えられて、社内の隅っこの部屋に仕事場を移されるというものです。(『[新装版]ピーターの法則』より)

 本書によれば、組織が大きいほど、こうした水平異動は容易になるという。広い組織ほど、人を埋めておくための席をいくらでも用意できるからだろう。

親の七光りという人事

 三つ目は「親の七光り人事」だ。これは、経営者が身内や知人を、いちばん下からではなく上の役職へいきなり据える人事を指す。

 本書では、余った予算を使い切るためだけに新しいポストを設け、後輩を局次長に任命した役所の例が描かれている。能力ではなく縁とタイミングしだいで椅子が決まるのだ。

つまり、階層社会では、何らかの条件に恵まれた個人は、階層のいちばん下からではなく、上のほうの階層からいきなり参入するものなのです。(『[新装版]ピーターの法則』より)

 近年は血縁にかぎらず、友人や後輩がこうした恩恵にあずかる例も増えていると本書は指摘する。形は違っても、本人の実力とは無関係に高い地位が与えられる点は同じなのだろう。

逃れられない法則の力

 ここまで見た祭り上げ、水平異動、親の七光り。本書はこのいずれも、ピーターの法則の例外ではないと結論づける。

 肩書きをどう取り繕っても、人は最後には自分の無能レベルへたどり着く

 出世に見える人事の多くは、組織の体面を保つための演出にすぎないというわけだ。

見かけだけの例外は、しょせん見かけだけにすぎません。階層社会で働く人間は、だれ一人としてピーターの法則の支配から逃れられない運命なのです。(『[新装版]ピーターの法則』より)

 ならば私たちにできるのは、肩書きの華やかさに惑わされないことだろう。

 誘いに飛びつく前に、その地位で本当に価値を出せるかを問う姿勢こそが、無能レベルへの転落を防ぐ一手になるかもしれない。