この時期でも私たちは日本酒の輸出がうまくいっているとは考えていませんでした。
フランスのワインの輸出実績が約8000億円、対して日本の日本酒の輸出は190億円弱、これを見て「海外で日本酒ブーム」なんて言葉がどこから出てくるんだろうという数字です。さらに、フランスの一流ホテルに日本酒が入っているといっても、保存状態が悪く、とても「これが日本の酒」と胸を張れるような品質ではありませんでした。
「この前もどこそこの酒蔵が来て、自分の蔵の酒をおとなしく取り替えていったよ」なんて、ソムリエに平気でうそぶかれる始末。そんな現状に業を煮やして、フランスに直営店を出したわけですが、そのあたりに着目してくれるマスコミもあれば、「我々は庶民の夢を壊さないという意味で、いろんな蔵の酒が海外で売れるようになってバラ色だ、という報道をしなければいけないんです。その代表としてこの店を取り上げたい」と、現状にはっきり目をつぶるマスコミもいます。
こういう現実にぶつかると、我々は「見たいものしか見ない国民」(少なくとも一部マスコミはそう思っている)なんだなと情けなくなります。
しかし、現状がうまくいってないのは当たり前のことで、世の中なんてうまくいくはずがない。だからこそ今の問題点を把握し、なんとか克服する努力をしないと私たちは健全に成長することはできないんです。出荷量980万石が40年間で290万石に落ちてしまった日本酒業界。その歴史を再現することになりかねない。しつこいようですが、問題点に目をつぶって知らん顔はできません。
とはいえ、酒蔵も人気商売ですから、つらいところです。
フランスのワイン業界から
「日本酒は格下」と批判も
フランスでは、日本人からかなりしつこいネガティブキャンペーンをやられて、これは相当堪えました。
その結果、フランスのワイン業界から、異口同音に聞こえてきたのは「獺祭は大企業で、機械で適当に大量生産で造っているから良い酒ではない」という話。
日本国内やアメリカの一部地域のように日本酒が先行している市場と違って、まだあまり日本酒に対する知識がない若い市場だと、こういう噂の影響が大きいですね。しかも、獺祭はそのフランス市場に「日本酒はきちんと管理しないと劣化してしまう」「日本酒にはワインと違い、ドメーヌとかエイジングとは別の独自の品質の価値観がある」と、ある意味挑戦状をたたきつけている状態です。フランスのソムリエたちからすれば、この獺祭の行動は面白くないわけです。
ここに本来は味方のはずの我が陣営の方から飛んでくる弾がスポッとはまるんですね。
『獺祭 経営は八転び八起き』(桜井博志、西日本出版社)
「儲けになりそうだから日本酒を扱う。ただしワインと比べれば東洋の端の島国の人間が造った格下の飲料だから適当に扱う。それでも日本人は我慢しなければならない」と彼らが思っているように私には思えたんです。意地が悪いですかね……。
フランスのワイン業界も日本酒の業界以上に陰謀や足の引っ張り合い、スキャンダルに事欠かないと聞いていますから、むべなるかな、ですね。
おもしろいじゃないですか。フランスのワイン業界から足を引っ張られる日本酒の蔵元なんて。日本酒業界では古今東西初めてですよ。こんな光栄なことはありません。受けて立ちたいと思います。まぁ、ちょっと痛いですけど、獺祭は、ただ「自分たちにやれることをやるのみ。獺祭の真意はゆらぎません。







