届いた食品はとりあえず冷蔵庫に詰め込まれ、3台ある冷蔵庫はいつもパンパンだ(ひとり暮らしで冷蔵庫が3台もあることがおかしいのだが……)。当然、食べきれない。余ったものを子どもや孫に持っていかせようとするが、よく見ると消費期限が切れていたりする。

 それでも食べきれないものは冷蔵庫の中で静かに腐敗していく。実家に行くと、冷蔵庫を開けて腐敗した食品の処理が私のタスクになった。それでも爆買いを続ける母に、私の口調もきつくなる。

娘「お願いだから、セーキョーで買う量を控えてください!」
母「戦争中、ひもじい思いをしたから、食べ物がないと不安なの」
娘「戦争を経験しているなら食べ物の大切さは分っているでしょ。腐らせて粗末にしちゃいけないんじゃないの?」
母「あなたに買ってもらっているわけじゃない。自分のお金で買ってるんだから文句を言われる筋合いはない!」
娘「結局、食べきれなくて、毎回、後始末をしているのは私でしょ?」

 戦況が悪くなり返す言葉なくなると、母は具合が悪くなって寝込んでしまう。こうなると、娘は黙るしかない。こうした爆買い問答を幾度となく繰り返しているうちに、私よりも先に冷蔵庫が先に音を上げた。冷蔵庫の1台が壊れたのだ。最悪だったのは、そのことに母がしばらく気づかなかったことだ。

 2026年元旦。実家に行くと、母が「なんだか冷蔵庫が冷たくならないの」と言う。台所に行き、冷蔵庫に近づくだけで腐臭が漂っている。冷凍食品は溶けて、野菜室も水浸しだ。冷蔵庫1台分の食料品がまるまる腐っていた。新年の挨拶もそこそこ、私は腐った食べ物の後処理をすることになったのだ。

(クソババァ~~! いい加減にしろ!)

 私の頭の中には、これまで誰にも言ったことのないような醜い言葉が浮かんでくる。それを口にする代わりに、私は腐った食べ物をバンバンとゴミ袋に放りこんだ。ふと見ると母はそっとその場を離れて消えていた。