
食えない院長先生 悔しいバーンズ
バーンズ(エマ・ハワード)が院長・多田(筒井道隆)の部屋に梶原校長(伊勢志摩)から書類を預かってくる。
そのときバーンズは気づく。机のうえに「帝都医科大学附属病院、看護科設立計画書」と書かれた書類が載っていることに。
漢字はまだあまり読めないと言いながら「ただ、おかげさまで、私、帝都医科大学附属病院、看護科設立計画書、その書類くらいは読めるようになりました。どういうことですか」と詰め寄る。
院長は「当院で看護課を新設することになりました。よって今後、梅岡看護養成所の実習生は受け入れることができません」と開き直る。
「見習い生が優秀ならば、今後も継続して受け入れるという話だったではありませんか」
「見習い生の皆さんがあまりに優秀だからです。ならば他校から見習い生を受け入れるのではなく、当院にも看護科を作り、梅岡看護婦養成所の見習い生のようないい看護婦を養成するべきだと意見が多々ありまして」
これは決定事項で覆ることはないと一方的な多田。にくらしいー。
「いつからそんなに日本語が? 教師が優秀だから生徒も優秀なんですね」
「お褒めにあずかり恐悦至極にございます」
この会話に院長とバーンズの冷え切った関係性がよく出ている。
まったくもって食えない院長に、さすがのバーンズも歯が立たない。せっかく日本語がわからないふりをして暗躍してきたが、院長のほうが上手。慇懃無礼な言い方でとりつくしまを与えない。
だがバーンズも大人。ここで激しく院長を責めることなく、日本語の丁寧な言い方で挨拶するだけ。
その晩だろうか、見習い生たちが食堂に集められる。校長先生が梅岡看護婦養成所の閉所を発表した。動揺するりんたち。
ここで校長先生のすばらしい語り。動揺も見せず、悲観や怒りも感じさせず、明るい調子で生徒たちに語りかける。
「皆さんは、最後まで帝都医大病院で実習できるので、安心して実習を続けてください。心配ご無用」
「以前、私は看護のことはよくわからないと話しました。それは、帝都医大のお医者様といえど、同じだったのではないでしょうか。それが、あなたたちの頑張りで思い知った」
「これが看護婦というものか。だったら、うちの大学でも育てよう。“そうだ、そうだ”と。こんなに誇らしいことはありません。皆さん、梅岡看護婦養成所の第一期生として、バーンズ先生に従い、胸を張って実習を全うしてください」
一方的に約束を反故にされ悔しいはずのバーンズや校長を、決して激情的に描かないところはとてもいいなと感じる。
ちなみに「心配ご無用」は大河ドラマ『秀吉』(96年)の秀吉(竹中直人)の決め台詞。いま、『豊臣兄弟!』で秀吉と秀長が活躍中だからこの台詞を取り入れたかどうかはさておく。
生徒たちも騒がない。
部屋に戻ると、こんな時こそ食べましょう!干し芋やアメとか、かりんとうとかいろいろなお菓子を分け合ってやけ食いする。たぶん彼女たちもいつの間にかバーンズの冷静沈着な態度に影響を受けているのだろう。
どんな逆境下でも慌てず、騒がず。明るく前向きに。バーンズ先生や校長先生のようなメンタルの強さを学んだことが、りんや直美たちにはこの2年間の最もいい勉強だったのではないだろうか。







