そのおかげで、何とか体調は戻りました。でも、商売がうまくいかない根本的な問題は解決しません。その大きな原因は、私の「接客」にあったからです。

 お客様の質問に応えようと商品について説明を始めると、ダーッと汗が出てきて、言葉に詰まってしまうのでした。頭の中には接客のセリフがあるのに、自信がなくて、緊張もしているので、口からうまく出てきません。おかげで、ただでさえ少ないお客様にも逃げられてしまっていました。思えば、ダメダメだったサラリーマン時代と似ています。

 このままでは倒産してしまう。窮状を見かねた母がある日、こんな提案をしてきました。

「結婚すればいい。そうすればお嫁さんが販売も配送も手伝ってくれる」

 お金がなくて従業員を雇えないなら、結婚して一緒に働いてくれる人を見つけるのが現実的な解決策だと。虫のいい話ですが、「たしかにそうかも……。店が生き残るには、接客のできる人が必要だ」と思ったのでした。

 そうして始まったのが、母の交友関係を生かしたお見合いです。数カ月の間に7度もやったのですが、返事はいつもノー。「長時間労働+親との同居」という過酷な条件が壁だったのかもしれません。

ハードな条件を受け入れた
運命のお見合い相手

 そんな中、紹介の紹介で出会った8人目のお見合い相手が、妻の百百代でした。

 2人で会ったのはお見合いの2回と結婚式を含めて、たったの3回です。しかも1度きちんと断ってきたのに、最終的には私と結婚してくれたことに納得がいかないままでした。ようやく謎が解けたのは何十年か経ったあとです。妻がようやく口を割りました。

「もともとサラリーマンの奥さんになるより、商店を切り盛りするようなところに嫁ぎたいと思っていたから。一緒にがんばっていこうかなと思った」とのことです。