もちろん原則としてメンバー以外は入手できず、本部から指示された特殊な方法でスマートフォンにダウンロードする。

 驚くのがその秘匿性の高さだ。

 我々がこのアプリをはじめて確認したとき、スマートフォンに表示されているアイコンは、一見すると通常よくあるビジネスアプリのようにしか見えなかった。また、クリックしてアプリを開いても、そこにはWEB広告のようなものが流れるだけで、中身を見ることはいっさいできない。もし何者かがこのアプリを入手して中身を確認しようとしても、いわば本の表紙しか見られない仕組みである。

 しかし、ある手順で画面上に暗証番号を打ち込んでログインすると、画面の様子は一変する。そこにはおびただしい数の連絡用掲示板やチャットグループが出現し、見ている間にも次々に書き込みが追加され、本社から指示が来る。全国の現場に散らばっているスカウトマンが頻繁にやり取りしている様子が、リアルタイムで確認できた。それらは、まるで大企業の社内連絡ツールそのものだった。

メンバーが逮捕されると
遠隔操作でアプリを削除

 以前は、エストニアにあるIT企業の製品をベースにしたアプリを使っていたようだ。しかし、2023年のメンバーに対するリンチ事件で警察にスマートフォンが押収されアプリの存在が知られたため、仕様を変えてイチから作り直したというから徹底している。組織を守るためならとことんやるという意識が、特に本社のメンバーには浸透しているのだという。

 組織内にはITに強い人物が複数いて、新しいアプリは、それらの人物を中心に1000万円以上の費用をかけて独自に開発したものなのだという。

「Fという名前の、パソコンとかプログラムにめちゃくちゃ詳しい人がいて、その人の仕切りでアプリを作ったと聞いています。いつもノートパソコンを持ち歩いていて、アプリ関係で何かあるとすぐに対応してくれますね。現場のスカウトは会うことはなくて、いつもアプリ内のメッセージでやり取りするんですが、噂では見た目がまあまあ地味な中年の男性みたいです。偏差値の高い大学を出て、かつてはそこそこ有名な企業でプログラム開発などを担当していたらしいですね」(現役メンバー)