頻発する強盗事件が世間を騒がせている。実行犯はネット上での募集に応募したことをきっかけに犯罪に加担する。実行犯が逮捕されても、その指示役まで捜査が届かないこともあり、安全に暮らしたい市民にとっては恐怖でしかない。トクリュウに身を落とすのは、いったいどんな若者たちなのか。(フリーライター 武藤弘樹)
なぜこんな長閑な街に……
増加・凶悪化する「トクリュウ」の犯行
匿名・流動型犯罪グループ、通称トクリュウの犯行が増加、および凶悪化している。
最初に衝撃を伴って知られたのは「ルフィ」と名乗る指示役らが関与したとされる、2023年1月の東京都狛江市の強盗致死事件である。
そして今年8月下旬以降、首都圏で強盗事件が相次いでいる。狙われたのは1件目から順に質店、中古ブランド店、質店だったが、4件目からは住宅が対象となった。
そのまま11件目まで住宅が連続して狙われ、そのうち10件目にあたる横浜市青葉区の事件では、男性が、窓を割って押し入ってきた複数の強盗犯に殴打されて死亡したと見られている。また、11件目の千葉県市川市の事件では、暗証番号を聞き出す目的で女性が連れ去られている。
トクリュウと見られる犯行は首都圏に限らないようで、10月21には山口県光市でトクリュウと関連の疑われる14~18歳の少年3人が強盗予備の疑いで逮捕された。
狙われた住宅があったエリアはどれも取り立てて治安が悪かったわけではなく、千葉県市川市のケースでは、あたりは民家が点在するような場所ではあったが、近隣住民は「このあたりは治安がいい」と認識していたのである。
少なくとも、最低限ドアや窓を施錠しておけば犯罪からは身を守れるだろうと考えられていた日本において、「自宅はもはや安全地帯ではない」ことを示唆するトクリュウが起こしている一連の強盗事件は、“安全”の概念を変えうる痛烈な出来事である。
こうしてトクリュウの強盗が相次いでいることには、いくつかの背景があるようだ。