スカウトは、女性を風俗店などに紹介することによって収益を得ている。紹介先の店舗は最重要の取引先であり、スカウトグループは店側からの報酬(スカウトバック)がないと組織そのものが成り立たない。店側に対する気遣いは、そこで働く女性に対して以上のものがあるというのも、うなずける。

 ナチュラルでは、組織内でのふるまいについても日ごろから厳しく指導される。現場のスカウト向けの資料でも、普段の礼儀について多くの分量が割かれている。

 基本的には、昔の体育会系気質と思われるような先輩・後輩、上司・部下の関係で厳しく統制をとっているのが特徴だ。メンバーの中には高校を卒業したばかりで、まだ社会人との接点がない10代の遊び盛りの者もいるが、組織に入るとまずは徹底して基本動作を叩き込まれるのである。

組織を維持するための
さまざまな「仕掛け」

 現役メンバーの佐伯(編集部注/筆者の取材に応じた人物)にはじめて会ったとき、妙に礼儀正しくて違和感を覚えるほどだったことを思い出した。ふだんやっているスカウト業務の中身や見た目などと、言動や所作がどこかズレているように感じたのである。

 暴力団の世界でも、新入りの組員が住み込みで幹部の身の回りの世話をする「部屋住み」という制度があり、ヤクザとしての所作を徹底的に叩き込まれる。いまの若い世代はこうした修業のようなことを嫌って、進んで暴力団に入ることはまずないが、ナチュラルの新人教育はかつてのヤクザの世界のような雰囲気さえあった。

『捕食 欲望をカネに変えるトクリュウ型犯罪集団「ナチュラル」の闇』書影捕食 欲望をカネに変えるトクリュウ型犯罪集団「ナチュラル」の闇』(清水將裕、日本橋グループ*、講談社)

 ただ基本的にはアプリを通じて指示を出し、ときには研修用の動画を使って教育するあたりが現代的ではあるが。

「礼儀に関しては、入ってから相当厳しく叩き込まれますね。周りを見て自分で覚えることもありますし、マナーがなってないって上司から気合を入れられることもあります。入ってしまえば、上の命令は絶対という雰囲気ですし、とにかくみんな怖い思いをしたくないので、基本的には上の方針には従うようになっていきます」(佐伯)

「いきなり上司から連絡が来て、規則を覚えているかどうか、テストされることもありました。それでうまく答えられないと呼び出し食らって怒られますね。普段はアプリとか通話でやり取りしているので、リアルで会ってガンガン詰めて言われると、けっこう恐怖心はあります。もちろん、場合によっては小突かれたり殴られたりということもありますし」(元メンバー)

 2000人ものメンバーを統制するナチュラル。匿名で繋がるトクリュウ組織だからこそなのか、組織を維持するための「仕掛け」のようなものがあちこちに見られる。