大規模校ならではの豊かさ

 共立女子について補足すると、同校は都内の女子校の中でも際立って生徒数の多い学校です。1学年あたりおよそ360名という規模は、今の時代では珍しい部類に入ります。

 近年は小規模校が好まれる傾向にありますが、大規模校には固有の豊かさがあります。1クラスの人数そのものは変わらないため、担任の目が届く範囲は同じですが、学校全体として相互に関われる生徒の数が多いということは、クラスをまたいだ友人関係が広がりやすいということでもあります。

 部活動や学校行事の充実度も、大規模校ならではの強みです。

 共立におけるバスケットボール、バレーボール、吹奏楽などのように、生徒が1学年200人規模の学校では成立しにくい部活も400人近い生徒がいれば厚い層のチームで実現できる可能性がはるかに高くなります。多様な部活の選択肢があれば、入学後に自分の好きなものに出会えるきっかけも増えます。やりたいことが見つかる環境は学校生活の充実に直結します。

「伝統」を強みに変える

 両校に共通するもう一つの特徴として、伝統を大切にしていることが挙げられます。

 大妻の校訓「恥を知れ」、共立女子の「良妻賢母」という言葉や、和室での茶道の授業は今の時代の感覚からするとやや古風に映るかもしれません(もっとも、昨今の抹茶ブームの中では、茶道は逆に温故知新の誇らしい教養とさえ言えるでしょう)。

 しかし、世の中が急速にアップデートされていく中で、伝統を守り続けることに価値を感じる保護者は一定数います。教育改革の波が大きくなるほど、「もっと普通の学校はないのか」という声も生まれてくるものです。

 ショッピングモールのレストラン街が仮に全部エスニック料理ばかりだったら、それもいいけれど、「普通」の和定食はないのかと思うような感覚と似ているかもしれません。

 共立女子も大妻も、時流に合わせて変わることを急いでいるわけではありません。地に足のついた姿勢を保っている。外から見ると改革が遅れているように映るかもしれませんが、だからこそ伝統というある種の変わらなさによる安心感を求める保護者の受け皿になれる学校でもあります。

 もちろん、両校とも前向きな変革を起こしつつあります。前述のとおり入試のスタイルを変えていることはその一つの表れです。

 一部の学校のようにホームページに外国人の教員が多数いることだけを強調したり、華やかな留学制度を大々的にアピールしたりすれば、もっと簡単に変化のイメージを演出できるかもしれません。しかし、実際には学校は変化しており、外からは大きく変わっていないように見えたり、変わり方が地味に見えたりするだけで、丁寧に改革を積み重ねているのです。

 古風な校訓を掲げているからといって、教員や生徒がみんなその言葉通りに生きているわけではありませんし、また校訓だけが学校の価値を決めるものでもありません。

 保護者の方には、伝統校の校訓のフレーズやイメージだけで判断するのではなく、学校が実際にどのように動いているか、どういう工夫をしているかを見ていただきたいと思います。

 共立女子も大妻も、その変化を丁寧に追っていくと今後の可能性に大いに期待できる学校だと私は考えています。

入試の変化が示すもの

 最後にもう一度、入試スタイルの変化について触れておきたいと思います。

 山脇学園が人気を集めた理由の一つは、入試に対するあくなき探求心でした。英検入試を導入したり、入試日程を調整したり、算数だけの入試を試みたりして、受験生が山脇学園に求めているものと学校が受験生に求める生徒像を、うまくすり合わせていった。その柔軟な姿勢と行動力が今の山脇学園の人気に結実しました。

 大妻の午後入試の開設も、共立女子の英検入試導入も同じ文脈で読み解くことができます。

 光った個性を持った子、優秀な子に来てほしい。そのために間口を広げ、多様な形で受け入れる姿勢を示す。その姿勢が、受験生に「この学校は自分たちのことを考えてくれている」という印象を与えます。

 次年度の入試を変え大躍進の可能性を秘めた両校が、伝統を守りつつ、さまざまな改革の工夫を重ね、今後発信力を磨くことで受験生の心をどのように掴んでいくのか目が離せません。