メディアでも成功事例として盛んに取り上げられ、「これからのビジネスモデルはサブスクだ」という空気が広がりました。しかし、サブスクがうまく機能するには、いくつかのコンテキスト上の条件があります。例えば、
・継続的に利用されるサービスであること
・顧客が「使い続けるほど価値が高まる」と感じること
・一定以上に解約の心理的・実務的コストがあること
・在庫や運用コストが変動に耐えられる構造になっていること
端的に言えば、アドビのソフトウェアは、サブスクを開始する以前から業界のデファクトスタンダードになっており、もう「それ以外の選択はあり得ない」という市場でのドミナントポジショニングを作ってから、満を持してサブスクに移動したことで、さらに市場を広げることに成功した、ということです。つまり「サブスクが戦略として機能するかどうかは、極めて文脈依存的」だということです。
サブスクをマネして
失敗した企業は少なくない
ところが、こうした条件を満たさないまま、「サブスク」というバズワードに飛びついて悲惨な結果を招いた事例も少なくありません。
スーツのサブスク「着ルダケ」(レナウン)は、ビジネススーツを月額で貸し出すサービスとしてスタートしたが、利用頻度の低さや顧客の好み・サイズの個別差によって解約が相次ぎ、回転率が上がらず赤字化。2020年に新規受付を停止し、事実上の撤退となった。
高級バッグのサブスク「Laxus(ラクサス)」は、一時は話題を集めたが、ブランドバッグの傷・汚損率が高く、修繕・在庫管理コストが収益を圧迫。利用者の多くが短期で解約するためLTV(Life Time Value=顧客生涯価値)が伸びず、近年は規模縮小傾向。
高級車サブスク「NOREL(ノレル)」(IDOM〈旧ガリバー〉)は、高級車を含む幅広い車種を月額で提供したが、保険・メンテナンス・減価償却コストが高く、長期契約の確保にも苦戦。2022年にサービスを譲渡し、自社運営から撤退した。
このように、表面上の「成功パターン」だけを真似しても、コンテキストが異なれば結果はまったく別物になります。流行の経営手法は、万能の飛び道具ではなく、その有効性は状況や条件といったコンテキストに厳密に依存しているのです。







