逆に、環境の不確実性が高く、先を読みにくい市場では、短いサイクルで試行と学習を繰り返す「適応」が適します。

 もし環境の不確実性が低く、自社が市場の方向性を変えるだけの力を持っている場合は、大胆なビジョンを掲げて市場を先導する「ビジョン主導」が効果的でしょう。

 最後に、環境の不確実性が高く、自社が業界全体の枠組みやルールを形づくる影響力を持つ場合には、エコシステムやプラットフォームを構築する「共創」戦略が有効となります。

 さらに、これらの4分類に加えて、環境が危機的で資源が枯渇している場合は、既存事業を整理し、強みに資源を集中させる「リニューアル(事業再生)」型が求められます。

 これは誤解されがちなのですが、戦略パレットの本当の価値は、このフレームによって最適な戦略コンセプトが選択できるということにあるわけではありません。戦略パレットの本当の有用性は、このフレームを用いて議論を尽くすことで、自社のコンテキストに関する理解が、リーダーシップチームの中で一枚岩のように揃ってくる、ということなのです。

 当のBCG自身はそのような観点から戦略パレットについて言及することはないようですが、このツールはある意味で、カール・ワイク(編集部注/組織理論家)の用語を借りれば「センス・メイキング」を司るための「対話のベース」を生み出すためのフレームなのです。

斜陽な部署に勤務する
社員の士気を上げた一言

 筆者の経験でこんなことがありました。

 クライアントはさる大手記録メディアのメーカーで、相談内容は、ソフトの流通がパッケージからデジタル配信にシフトすることで、それまで主幹事業だったDVD等のパッケージメディアの製造事業が急速に斜陽化しており、当該部署の士気が著しく低下しているのでなんとかしたい、ということでした。

 それまで経営者として、主幹事業のパーパスの再設定をしたり、オフィスを離れた合宿での話し合いなど、組織活性化のイベントをやったりしたものの「自分たちが衰退事業に関わっている」という認識は誤魔化しようがなく、さしたる効果が得られなかった、というのです。