経営コンセプトの導入は
自社の状況を理解してから

 残念なことに、コンテキストを無視して飛び道具トラップに飛びついて自滅するケースは後を絶ちません。本来、経営戦略コンセプトを有効に使うためには、まず自社が置かれている事業環境を正確に診断し、その環境に適した戦略アプローチを選び取る必要があります。

 本稿は、経営戦略論の解説書ではないので、踏み込んだ考察については専門書を紐解いていただければと思いますが、ここで一つだけ紹介しておくとすれば、筆者の古巣でもあるボストン・コンサルティング・グループ(以下、BCG)が提唱する「戦略パレット」は有用な示唆を与えてくれると思います(図9)。

図9 BCGの戦略パレット同書より転載 拡大画像表示

 BCGの戦略パレットは、そもそも「世間には数多くの戦略フレームや戦略コンセプトがあるが、どのようにそれらを使い分けたらいいかわからない」という問題意識に端を発しています。つまり「戦略コンセプトは一つの型で万能に通用するものではなく、環境の性質によって使い分けるべきだ」という考えに基づいているのです。

BCGの戦略パレットが
本当に役立つ理由

 BCGは、事業環境を二つの観点から捉えます。

 第一に、その市場や競合の動きにどの程度の不確実性があるか。第二に、その市場やルールそのものを自社がどの程度変えられるか。この二つの軸で環境を見極めると、異なる性格をもった複数の戦略タイプが浮かび上がります。

 例えば、環境が安定していて先の見通しが立ちやすく、しかも市場構造を変えることが難しい場合には、長期計画を立て、効率性を最大化する「クラシック」な戦略フレームが有効です。具体的な戦略論としてはマイケル・ポーターによるSCP(Structure-Conduct-Performance=構造‐遂行‐業績。構造的に儲かる産業であるかどうかを分析する理論)が該当します。