もうひとつの誤算が新橋駅周辺の再開発の遅れである。西口地区再開発事業は2015年にニュー新橋ビルの建て替え検討から動き出したが、コロナ禍の影響で計画が遅れ、基盤整備方針案の策定は2025年までずれ込んだ。

 東京メトロは「新橋駅改良工事については一時休止している」として「混雑状況や開発動向等を踏まえ、状況を注視しつつ引き続き検討を進めていく」と回答しており、中止ではないとのことだ。

 実際、工事はある程度進んでいたようだ。工事を請け負った大成建設のウェブサイトによれば、「渋谷方面の既設階段の撤去・新設及びホーム延伸予定箇所の構框改良と軌道内の施設物設置室(インピーダンスボンド室、沿線電話室)の新設工事」は2023年4月に竣工しており、線路間にホームが新設された様子を映した写真も掲載されている。つまり工事ヤードとしての役割は既に終了したということだ。

(上)東京地下鉄改良建設部設計課「推奨土木遺産である銀座線新橋駅の改良計画」『土木学会第70回年次学術講演会』より抜粋(下)大成建設ウェブサイト工事実績より引用(上)東京地下鉄改良建設部設計課「推奨土木遺産である銀座線新橋駅の改良計画」『土木学会第70回年次学術講演会』より抜粋(下)大成建設ウェブサイト工事実績より引用 拡大画像表示

歴史的遺産として
問われる保存と活用

 記事執筆にあたり東京メトロに現地取材を申し込んだが、日程の都合上、対応できないとのことで叶わなかった。現在は「幻のホームは留置線や会議室として使用している」とのことなので、2016年以前の使用方法に戻った格好だ。「銀丸弐号」の参加者がSNSに投稿した写真を見ても、少なくともホーム部分は何ら変わっていないと思われる。

 実は幻のホームには保存のあり方を左右する、もうひとつの計画がある。東京メトロは2012年に銀座線全19駅のリニューアル計画を発表し、「下町エリア(浅草~神田間)」、「商業エリア(三越前~京橋間)」、「銀座エリア(銀座駅)」、「ビジネスエリア(新橋~赤坂見附間)」、「トレンドエリア(青山一丁目~渋谷間)」駅のエリアごとにデザインコンペを実施。浅草駅から順次、全面改装を進めてきた。